リウマチ・膠原病の血液検査(日々の診療編)

リウマチ・膠原病の適格で安全な診療には、日々の血液検査がとっても大切です。
血液検査を日々行う目的は


  • 「①リウマチ・膠原病の治療効果を見るのに必要な検査」
  • 「②お薬で安全に治療するのに必要な検査」

の2つに大きく分けられます。
それぞれの検査の意味について説明させて頂き、皆さんが日々の検査結果をどのように見たらよいのかにお役立ていただけると嬉しいです。

リウマチの治療効果をみる検査
CRPシーアールピー

体の中で炎症が起きると高くなるタンパク質になります。炎症がおきて数時間で高くなり、1-2日で下がってきます。リウマチの場合には関節の中に炎症が起きるのでCRPは高くなり、治療し関節の中の炎症が良くなると下がります。
当クリニックでは院内で7-8分で測定できるので、ここ数日のリウマチの状況をその場で見ることができます。また風邪や肺炎などの感染症でも高くなるので、ただの風邪なのか、肺炎まで起こしそうなのかなどの目安にもなるとっても役立つ検査です。

CRP数値の目安は
  • CRP 0~0.4 炎症なく正常
  • CRP 1以下 おおむねリウマチはOK
  • 風邪CRP2-3   肺炎CRP6-15
  • 膀胱炎CRP2-3  腎盂腎炎CRP10-20
MMP3エムエムピースリー

MMP3は関節の中の軟骨を分解する酵素になります。リウマチが出てくると高くなり、良くなると下がる点はリウマチと同じです。ただCRPと違って感染症などの関節以外の原因では上昇しないので、より関節だけを評価するのに役立つ検査になります。
もちろん正常範囲内あることが望ましいですが、プレドニンを使っている方や、腎臓の働きが落ちている方だとそれだけで高くなるので見方には注意が必要です。またCRPが10増えたら大変ですが、MMPはもとの数値が大きいので、10や20の多少の変動は心配しなくても大丈夫です。

MMP3数値の目安は
  • 女性57.9以下  男性121以下  (女性・男性で違うのも特徴ですね)
リウマチの安全な治療のための検査
ALBアルブミン:栄養状態

体の中の栄養状況を見る検査になります。
リウマチの炎症が強い状況ですと、食事をしても栄養をリウマチに取られてしまうので低くなることがあります。リウマチが良くなり炎症がなくなると栄養状態もよくなりアルブミンも上昇し回復してきます。

Alb数値の目安は
  • 3.8以上:栄養状態は良好です
  • 3未満:栄養状態不良です、感染症や浮腫みなどに注意しましょう
ASTエーエスティー:肝機能

肝臓の数値はAST、ALT、LDH、γGTPなど数種類ありますが、リウマチの治療で一番大切なのはASTになります。リウマチの薬だけでなく風邪薬もふくめ、どんな飲み薬も肝臓で分解しますので、薬の量がふえると肝臓が疲れてしまうことがあります。その際に一番最初に高くなるのがASTです、逆に肝臓の疲れがとれて良くなったときに最初に下がるのもASTになります。
特に、リウマチ治療の一番大切なお薬であるメトレート(リウマトレックス)は量が増えるとASTが高くなることがあります。ただ、肝臓が疲れてASTが上がっても自覚症状はまずありません。肝臓が疲れているのに気が付かずにお薬を続けてASTがどんどん高くなって(AST3000など)ようやく疲れやすさなどの症状がでてきますが、そこまで肝臓が悪くなってしまっては大変です。入院での治療が必要になってしまいます。症状が出てからでは遅いので、日々の血液検査でASTの上昇を早期に発見することがとっても大切なんですね。AST100前後の上昇はよくあり、お薬の調整で大丈夫です。

AST数値の目安は
  • 40以下:正常です
  • 40-100未満:フォリアミン(葉酸のビタミン剤)を増やして対応
  • 100以上:メトレート(リウマトレックス)も減らします
Crクレアチニン、eGFRイージーエフアール:腎機能

クレアチニンというのは尿に捨てられる筋肉から出る老廃物です。腎臓の働きが悪くなると老廃物であるクレアチニンが尿に捨てられずに体にたまってくるので、血液検査をすると高くなってきます。クレアチニンは低ければ低いほど腎臓がしっかり働いていることになります。
注意が必要なのは、もともと筋肉の老廃物なので筋肉の多い大柄な男性ではクレアチニンは高くなり、筋肉の少ない小柄の女性では低くなることです。例えば同じクレアチニンCr1.0という数値でも大柄な男性では腎臓は問題なし、ただ筋肉の少ない小柄の女性ですと腎臓の働きが落ちているという事になるんですね。
そこで性別や年齢による筋肉量の違いを含めてCrを計算したものがeGFRになります。

eGFR数値の目安は
  • 60以上:正常です
  • 50-60:腎臓の働きが少し低下しています メトレートなど腎臓に負担のかかるお薬は注意して使います
  • 50未満:メトレートやロキソニンなど腎臓に負担のかかる薬はなるべく減量・中止します
  • 40未満:メトレートやロキソニンは使いません
  • ※水分を取らずに脱水気味になるとeGFRは低下してしまいます。夏も冬もしっかり水分を取りましょう!

WBC白血球 Hb貧血 Plt血小板

血球といわれる血液の中を流れている細胞になります。
リウマチの治療で問題になるのは、薬が効きすぎたときにこれらの細胞が減ってしまう事です。WBC白血球が減ると感染症にかかりやすくなり、Hbが減ると貧血、Plt血小板が減ると血が止まりにくくなります。
ただ、もともと血液の中を自由に動いている細胞達なので採血をする時間帯や姿勢・部位によっても数値はかなり変動します。また他の検査にくらべて個人差が大きいのが特徴で、基準値から少し外れただけではそれほど心配はいりません。
基準値との比較ではなく、先月との比較など今までの自分の結果と比べて変化が無い事が大切になります。

血球数値の目安は
  • WBC白血球:女性3500-9100 男性3900-9800
  • ※WBC白血球は個人差が大きく、特にシェーグレン症候群やSSA抗体陽性の方は2000-3000前後と低めになります。先月とおおきく変わらなければ問題ありません。
    またプレドニンを使われている方は10000以上と高めに結果がでますが問題ありません。

  • Hb貧血:女性11.3以上 男性13.5以上
  • ※リウマチの炎症があると栄養不足となりHbは低めになります、また女性の方は生理もありますのでなかなか基準値以上を目指すのは難しいことが多いです。Hb9-10と軽度の低下で前月と比べて大きな低下が無い場合は、おおむね心配ありません。

  • Plt血小板:13万~36.9万
  • ※これも個人差の大きい検査になります。前月と比べて大きな低下が無い場合はおおむね心配ありません。また炎症があるとPltは高くなるので、炎症の強いリウマチの方が良くなると高かったPltが下がって正常範囲内になる方が多いです。

    急に大きく低下した場合にはお薬が影響した可能性があるので、お薬を中止するなどの対応が必要です。

LDL:悪玉コレステロール

悪玉コレステロールは血管の壁にくっついて、血管を傷つけて詰まらせてしまします。これが良くお聞きになる動脈硬化になります。
特に腎臓や心臓、脳などは細い血管が多いので動脈硬化の影響が出やすく、血管が傷つき詰まってしまうと腎不全や心筋梗塞、脳梗塞などを起こすので大変です。
実はリウマチがあるとそれだけで動脈硬化を起こしやすいことが分かっています。ですので、リウマチの方は特にLDL悪玉コレステロールが高くならないように注意が必要です。

LDL悪玉コレステロール数値の目安は
  • 140未満:正常
  • 140-180:動物性脂肪(お肉 卵 乳製品 お菓子)をへらしましょう
  • 180以上:お薬での治療を考えましょう
KL-6ケーエルシックス:間質性肺炎

リウマチは免疫細胞が関節で悪さをする病気ですが、肺にも悪さをして特殊な免疫の肺炎を起こすことがあります。これを「間質性肺炎」と呼びます。
普通の肺炎とは違い、外から細菌が肺に入って悪さをすることが原因ではなく、もともと体の中にある自分の免疫細胞が悪さをする点が違います。 リウマチの方ではこの間質性肺炎をもっている方が多いのですが、急に肺炎が悪くならなければ治療はせずに慎重に経過をみることになります。 その際に、役立つのがKL-6になります。
間質性肺炎が広がってくるとKL-6が高くなるので、以前の検査と比較して見ていきましょう。

KL6間質性肺炎数値の目安は
  • 500未満:正常
  • 500以上:以前の検査と比較して上昇傾向にあればレントゲン・CTなどで肺の検査が必要です
βDグルカン:カビ肺炎

「ニューモシスチス肺炎」というカビの肺炎で高くなる検査です。この肺炎の怖いところは、咳、痰、熱などの肺炎の症状がみられないことが多いところです。なんとなくダルい、食欲がない、息が切れるといった症状しかなく、気が付いたら肺全体に肺炎が広がっていたなんてことがあるんです。また酸素が急激に下がることがあり、すぐに入院治療が必要になってしまいます。
こんな怖いカビの肺炎を起こす前に、少しカビが増えてきた段階を見つけるのが血液検査のβDグルカンになります。また当院ではあらかじめカビ肺炎を予防するお薬(バクタ)を通院中の皆さんに使って頂いております。

βDグルカンの目安は
  • 20未満:カビの心配はありません
  • 20以上:カビが増えてきている可能性があります。バクタやカビ用のうがい薬などが必要です。
HBV-DNA定量:B型肝炎ウイルス

こちらは治療開始する前のB型肝炎ウイルス検査で引っかかってしまった方だけが調べる精密検査になります。
B型肝炎ウイルスのDNAの量を測定することで、体の中にB型肝炎ウイルスが増えていないかを確認します。
ごく稀にリウマチ治療中にB型肝炎ウイルスが増えてくることがあり、気づかずにほおっておくと怖い肝炎を起こしてしまうことがあります。そのため、肝炎を起こす前のB型肝炎ウイルスが増えてきた段階を早期に発見することが大切です。数か月毎にHBV-DNAが増えていないかを検査をし、肝炎を発症しないように注意します。

HBV-DNAの目安は
  • 2.1未満:正常です
  • 2.1以上:B型肝炎ウイルスが増えてきており、治療が必要な可能性があります。肝臓専門の医師に紹介させて頂きます。
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