関節リウマチについて

Rheumatoid Arthritis

関節リウマチについて

①関節リウマチってどんな病気?

関節リウマチを一言でいうと、「自分の免疫細胞が手足の関節を攻撃して、痛みや変形をおこしてしまう病気」となります。

もともと人間の体には、外から侵入してくる細菌やウイルスを退治するために、免疫細胞があります。その免疫細胞が暴れて自分を攻撃すると、様々な症状や病気を引き起こしてくるのですが、その中で関節リウマチの場合には免疫細胞が自分の手や足の関節を攻撃してしまいます。

そうすると、「手首」「手の指」「足の指」に痛みや腫れが出てきます。その他にも「肘(ひじ)」「膝(ひざ)」「足首」「肩」にも、痛みや腫れが出てくることがあります。

またその関節が腫れた状態が何カ月も続いてしてしまうと、関節の骨が壊れてしまい、手足の関節の「変形」を起こしてしまうのが、リウマチの特徴です。

②リウマチと膠原病(こうげんびょう)は何が違うの?

膠原病(こうげんびょう)という病気を聞いた事がある方もいらっしゃるかもしれません。
膠原病は自分の免疫細胞が暴れて体を攻撃してしまう病気をまとめた呼び方で、その中にはいくつかの病気が含まれています。

例えば、免疫細胞が涙を出す涙腺(るいせん)や唾液を出す唾液腺(だえきせん)を攻撃してしまうと、目や口が乾いてしまう「シェーグレン症候群」という病気を起こしてきます。

また免疫細胞が皮膚や筋肉を攻撃すると、皮膚にカサカサした湿疹が出て、筋肉痛や筋力低下が起きる「皮膚筋炎(ひふきんえん)」という病気が出てきます。

同じ膠原病でも、免疫細胞が体のどこを攻撃してしまうかによって症状が変わり、病気の名前も変わるのですね。

関節リウマチの場合には、①でお伝えした通り、免疫細胞が手や足の関節を攻撃してしまい、手や足の痛みや腫れ、さらに変形を起こしてきます。つまり関節リウマチも膠原病の一つにはなるのですが、他の膠原病と大きく違う点があります。

それは「関節リウマチは、病院ではなくクリニックで診断や治療ができる」という点です。

③今の時代、リウマチ治療はクリニックで、膠原病は総合病院へ

昔はリウマチの診断や治療が進んでいなかったので、大きな病院に入院して、膠原病科で点滴の治療を受けたり、手足の変形が進んでしまうと整形外科で手術をされる方が多くいらっしゃいました。
そのため、リウマチは大きな病院の膠原病科や整形外科で治療する病気でした。

しかし、今の時代は違います。リウマチの治療は「リウマチ専門クリニック」で行うようになりました。

これは「関節エコー検査」という新しい検査が登場し、クリニックの診察室でこの関節エコー検査を行って、リウマチを早期に発見する事ができるようになったからです。

さらに治療もとても進歩し、クリニックで安全に病院と変わらない専門治療ができるようになったからです。また治療の進歩によって、以前のように手足の変形を起こしてしまう方も非常に少なくなり、整形外科を受診する必要もなくなりました。

検査や治療の進歩で、リウマチは病院ではなく、リウマチ専門クリニックで治療する時代になったんですね。

一方で膠原病(こうげんびょう)は、関節だけが痛くなるリウマチと違って、脳・心臓・肺・腎臓・神経など体のあちこちに症状が出てきます。

そのためCTやMRI、胃カメラや大腸カメラなど、病院で行うような全身の検査が必要になります。
また治療もリウマチより強い免疫抑制剤を使う事が多く、入院して治療する事が多いです。
そのため膠原病は、今でも大きな病院の膠原病科で検査や治療が必要となります。

リウマチが心配な方は通いやすい「リウマチ専門のクリニック」へ、膠原病が心配な方は入院もできる「総合病院の膠原病科」がおすすめとなります。

  関節リウマチ 膠原病
症状 手足の関節 全身(脳・心臓・肺・腎臓・神経など)
検査 関節エコー検査 CT検査、MRI検査、胃カメラ、大腸カメラなど
治療 通院でOK 入院して治療
受診 「リウマチ専門クリニック」 「総合病院の膠原病科」

④私がリウマチになった原因は?

最近の研究で、「タバコ」と「歯周病」がリウマチになる原因であることがわかってきました。
「タバコ」や「歯周病」が刺激となって、「CCP抗体」という悪い免疫物質が体の中で作られてしまいで、このCCP抗体がリウマチを引き起こします。

またこの「タバコ」と「歯周病」は、リウマチの発症の原因になるだけではなく、お薬の効き目も悪くしてリウマチの治療を邪魔してしまいます。
リウマチの予防にも、治療にも「禁煙」「歯周病ケア」が大切なんですね。

その他には「ストレス」「睡眠不足」「ケガ」「感染症」をきっかけでリウマチを発症される方もいらっしゃいます。
原因ははっきりしていませんが、おそらくこれらの刺激が体に加わる事で、免疫のバランスが崩れてリウマチを発症するきっかけを作ってしまうと考えられます。
あまりストレスをためずに、ゆっくり寝る事が大事ですね。

また女性の場合には「妊娠出産」「閉経」のタイミングが、リウマチが出やすい時期になります。
これらの時期は、体の中の女性ホルモンの量が急激に増えたり減ったりして変動するので、このホルモン変化がリウマチを発症する原因になると考えられています。

難しいのは出産後や閉経後は、リウマチでなくても女性ホルモンの減少で「こわばり」や「痛み」が出る事があります。
リウマチと見わけるポイントは痛みとこわばりだけでなく、手や指が「腫れている」ことです。
腫れがある場合にはリウマチの可能性があるので、気になる方がご自分の手や指を見て確認してみてくださいね。

その他には「生まれ持った体質(遺伝)」も少し関係している事がわかっています。こちらは次の項目で詳しくご説明しますね。

関節リウマチの原因 予防対策
タバコの煙 禁煙、タバコの煙を避ける
歯周病、虫歯 歯磨き、歯間ブラシ、歯医者さんで定期健診
ストレス、睡眠不足 ゆっくり休んで、6~7時間睡眠
ケガ、感染症 手洗い・うがい・マスク
遺伝 そこまで気にし過ぎない

⑤関節リウマチは子供達に遺伝するの?

実は僕自身も祖父がリウマチであり、それがきっかけでリウマチ医師になったこともあり、リウマチが遺伝するか気になるお気持ちがよくわかります。

ただ安心してください。遺伝がリウマチに影響する確率はわずかなので、リウマチは遺伝病ではありません。

確かにリウマチに関係する遺伝子も複数見つかってきていますが、一つの遺伝子だけでリウマチを発症するのではなく、複数の遺伝子がそろって初めてリウマチになるといわれています。

イメージとしては、ゲームのビンゴの様に、リウマチの遺伝子が一つではなく一列全てそろわなければ、リウマチは発症しないといった感じですね。

また遺伝だけでなく、前述の「喫煙」や「歯周病」など生活習慣や環境の影響も大きいので、遺伝の影響はそこまで心配しなくても大丈夫です。

実際、遺伝子が全く同じ双子でお一人がリウマチになっても、もう一人がリウマチになる確率は15~30%といわれています。同じ遺伝子でもリウマチにならない可能性の方が高い事をみると、遺伝だけが原因ではなさそうですよね。

また、リウマチを発症される方は200人に1人といわれていますが、ご家族にリウマチの方がいらっしゃる方では200人中2人が発症する程度といわれています。 少しだけ増えますが、そんなに遺伝の影響はないですよね。なので、そこまで心配しすぎないでくださいね。

⑥早期のリウマチも発見できる最新検査って?

リウマチの診断は「関節エコー検査」の登場で大きく変わりました。

昔はレントゲンでリウマチの診断をしておりましたが、実はレントゲンでは骨しか見えないって事をご存知でしょうか?リウマチが最初に起きる肝心の関節の中は、残念ながらレントゲンでは写らないのです。
そのためレントゲンでは早期のリウマチは発見できず、リウマチが進行して骨が壊れてから初めて診断となります。

でも骨が壊れる前に早くリウマチを見つけて治療したいですよね?そこで活躍するのが「関節エコー検査」です、エコーを関節の上にポンっとあてるだけで、関節の中に腫れ・炎症があるかがわかり、骨が壊れる前の早期にリウマチの診断ができます。

またリウマチ患者さんの1割以上は、血液検査で発見できないという事をご存知でしょうか?
特に早期リウマチの方では血液検査では2割以上が発見できないと言われています。
この血液検査だけでは発見できないリウマチも、関節エコー検査ではっきり診断できるようになりました。

逆に血液検査でリウマチの数値が出ていても、まだリウマチを発症していなくて治療が必要ない場合もあります。実は、血液検査の結果だけで判断すると、不要なリウマチの治療を始めてしまう可能性があるんです。

そんな時に役立つのも関節エコー検査で、関節の中に炎症がおきているかを調べる事でリウマチを発症しているかどうかが分かり、治療を開始する必要があるかを判断できます。

⑦当院が目指すワンランク上の治療目標って?

さらに治療をはじめた後に、リウマチが完全に治まっているかの確認も、関節エコー検査があってはじめてできます。

従来は血液検査で炎症の数値が正常になったり、痛みがほぼなくなる状態が「寛解(かんかい)」と呼ばれ、リウマチの治療目標とされていました。しかし、実は従来の寛解では、リウマチが手指に隠れていて、数年後に手足の変形を起こしてしまう事が分かってきました。

そこで将来的な手指の変形も防ぐために、関節エコー検査で関節の中で炎症が残っていない状態まで目指して治療していく事が大切です。

このリウマチが本当に良くなっている状態を「エコー寛解」と呼びます。
私達は「従来の寛解」ではなく、この将来的にも手足の変形が起きない「エコー寛解」を目指して、患者さんと一緒に治療をしております。

また治療中に痛みが出た場合にも、リウマチで起きているのか、それとも周りの軟骨がすり減ったり、筋肉がこわばって痛んでいるのを、その場で関節エコー検査で調べることができます。

リウマチが原因で痛みがあればリウマチのお薬を少し増やす必要がありますが、そうでない時は湿布や塗り薬、ストレッチだけで大丈夫と治療が変わってきます。

治療開始した後も関節エコー検査が大活躍します。

  関節エコー検査 レントゲン検査 血液検査
早期発見
治療評価
治療目標 ◎(エコー寛解)
特徴 関節内の炎症を見る事ができる 関節内は見えない
骨の変形だけはわかる
正常でもリウマチが出ている事がある

⑧リウマチは最新の特効薬で解決

リウマチの治療も大きく進歩しました。

以前は有効な治療薬がなく、「痛み止め」や「ステロイドホルモン剤」で痛みを和らげることしかできず、多くの患者さんが痛みを我慢されていました。
残念ながら、リウマチの進行も止められずに手指が曲がり、肘・膝が脱臼したりして、最終的には整形外科で手術をされたり、寝たきりの状態になってしまっていました。

しかしここ10年で「生物学的製剤」という言わば「リウマチの特効薬」ができたことで、リウマチの痛みが完全に良くなるようになりました。
関節で悪さしている免疫細胞を落ち着かせて、リウマチの進行も止める事ができるので、骨の破壊や関節変形を起こさない治療もできるようになりました。

さらに、生物学的製剤は妊娠や授乳中の安全性も高く、妊婦さんでも安心して治療できます。今まで妊娠中はステロイドホルモン剤が中心であった治療も大きく変わっています。

実は私の大好きだった祖父も関節リウマチを若い頃から患っており、「痛み止め」と「ステロイド」のみで長年治療をしていました。気候の悪い日には痛みが強くなり布団で横になって痛みを我慢し、年を追うごとに手指・足指の変形も進行してしまいました。
私が医師になり、リウマチを専門としたのも大好きな祖父の関節リウマチを良くしてあげたいという思いからでした。

リウマチは昔のよう有効な治療薬がなく、痛みに耐えて寝たきりになってしまう病気では決してありません。あまり心配されずに、いつでもご相談くださいね。

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