関節リウマチの治療について
「リウマチに最近いい薬が出来たんだって?」
「生物学的製剤っていう特効薬ができたんでしょ?」
そうなんです、皆さんお聞きになったことがあるかもしれませんが、リウマチの治療薬はここ10年で目覚ましく進歩しました。
今まで良い薬が無くて痛み・変形に困っていたリウマチの方も治療できるようになったのです。
お薬は大きく2つに分けると「生物学的製剤(皮下注射、点滴)」と「飲み薬」になります。
生物学的製剤(リウマチ治療の特効薬)
関節リウマチを良くするために作られた、まさに「リウマチの特効薬」になります。
リウマチにとても良く効きますので、新しい薬の研究も進み現在では7種類になりました。
7種類の中には、関節リウマチの原因物質(TNF、IL6)を抑えるタイプ、原因細胞(Tリンパ球)を抑えるタイプなどあります。
「注射を始めて痛みがうそのようになくなりました」
「最初は注射が怖かったけど、やってみると簡単ですね」
飲み薬に比べて効き目が早いのも生物学的製剤の特徴です。早い方では注射を始めて1-2週間で効果が出てきます。
「生物学的製剤が必要なのは分かったけど、お薬の値段がね・・・」
「今は良いけどこの先ずっと生物学的製剤を使用するのは経済的に心配」
確かに生物学的製剤はとても良い薬である分、お値段が高いお薬になります。
そんな皆さんの声をお聞きし、
「お薬代の為に生物学的製剤が使えない方の力になりたい」
「将来にわたり安心して治療を継続して頂きたい」と思うようになりました。
そこで私なりに考えた方法が、「半分でも十分作戦」「お薬減量作戦」の2つです。
①「半分でも十分作戦」♪
当院では多くの方に「通常の半分量」の生物製剤で治療開始させていただいております。
「えっ、半分の量でリウマチが良くなるんですか?」とお思いの方もいらっしゃると思います。安心してください、半分の量でもかなりの方のリウマチが良くなるんですね♪
実は生物学的製剤は海外で開発されたお薬ですので、欧米の方の体格を元に量も決まっています。
欧米の方の平均体重は75㎏、一方で日本人ではどうでしょうか?小柄な女性の方などは40㎏前後の方もいらっしゃいますよね。
体重が半分ならお薬も半分で十分です。お薬の量が半分なら金額も半分、感染症リスクも減りますのでお勧めですよ。
通常量 オレンシア 毎週1本 4万円/月(3割負担)
☆当院の半分作戦 オレンシア 2週おき1本 2万円/月(3割負担)
②「お薬減量作戦」♪
また、当院では生物学的製剤でリウマチが良くなったら積極的にお薬を減らすチャレンジをしております。
生物学的製剤でしっかり治療するとリウマチの勢いが弱まるので、そうなるとお薬を減らせるチャンスなんですね。
お薬が減ると、経済的な心配も減りますし、副作用の心配も減ります、ぜひ御相談ください。
多くの方はリウマチが良い状態が3カ月程度続くと、お薬を減らせるチャンスです。
例えば毎週であった注射が、2週間に1回、さらに3週間に1回とリウマチが悪くならないことを確認しながら慎重にお薬を減らしていきます。
4週に1回(月1回)まで減らせると良いですよね。
☆当院のお薬減量作戦 エンブレル 毎週1本 4万円/月(3割負担)
⇒2週おき1本 2万円/月(3割負担)
⇒3週おき1本 1.5万円/月(3割負担)
⇒4週おき1本 1万円/月(3割負担)
<当院で良く使う生物学的製剤の種類>
・オレンシア:T細胞という免疫細胞を抑えます
「優しい生物学的製剤」という印象です
感染症のリスクが低く、またメトレートなどの飲み薬がなくても効果を発揮します。
当院では最初に使う事が多いです。
・エンブレル:TNFという免疫物質をおさえます、妊娠/授乳も大丈夫です
「早くて安全な生物学的製剤」という印象です。
妊娠・授乳中も使える安全性の高いお薬です。
さらに効き目も早いので、当院では痛みが強く、炎症の数値(CRP)が高い方には最初に使います。
またオレンシアが効かなかった方の、2番手の薬剤としても重宝しております。
・シムジア:TNFという免疫物質をおさえます、妊娠/授乳も大丈夫です
「効き目の早さNo1の生物学的製剤」という印象です。
他の薬剤と大きく異なる点が、最初の3回は2本ずつ(通常の2倍量)を投与することです。
そのため最初にガツンとリウマチを良くする非常に効き目の早い薬剤です。
当院ではリウマチが非常に強い方にお勧めしております。
またエンブレルと同様に、オレンシアが効かなかった方の、2番手の薬剤としても重宝しております。
・ヒュミラ:TNFという免疫物質をおさえます
飲み薬のメトレートと相性の良いお薬です。
リウマチ以外にも、乾癬性関節炎、ベーチェット病、クローン病などにも使用できます。
特に乾癬性関節炎では関節痛も良くなりますし、皮膚の症状もよくなり喜んで頂けることが多いです。
・シンポニー:TNFという免疫物質をおさえます
4週毎に病院で投与する皮下注射薬です。
1回2本の2倍量投与も可能です。
・アクテムラ:IL-6 という免疫物質をおさえます。
他の生物学的製剤とは別の効き方をするので、他の薬であまり効果がなかった方にも、リウマチが良くなることが期待できます。
また薬代が他の注射の半分程度なのも嬉しいですね。
<当院で良く使う飲み薬の種類>
メトレート(飲み薬のエース)
リウマチの飲み薬の代表になります。
薬代も月2000-4000円(3割負担)で、効果も高いお薬です。
効果とお薬代の面で優れており、リウマチと診断したらまず使用する薬剤となっています。
飲み方が特殊で注意が必要です。
1週間に1~2日だけ薬を飲んで、あとの5~6日は飲みません。
「1週間のうち薬を飲まない日がこんなにあって効き目があるの?」と思われるかもしれませんがこの飲まない日というのが実は大切なんですね。
関節で悪さしている免疫細胞だけを退治して、それ以外の正常な細胞には影響を与えない、
その絶妙なバランスが「1週間に1~2日だけ薬を飲んであとの5~6日は飲まない」というのみ方なんです。
もし毎日飲んだらどうなるか?絶対にやってはいけないことですが、正常の細胞まで退治されてしまうので、口内炎や嘔吐・下痢、貧血、腎機能低下などの副作用を引き起こします。
(メトレートが使えない方)
・腎臓が弱っている方
・御高齢の方
・肺が良くない方
・妊娠/授乳中の方
などはメトレートを使用することはできません。
メトレートの効果は飲み始めて早ければ2週後から出てきます。
一方で、飲み始めは胃腸症状やアレルギーが出ることがあるので、最初は少ない量で初めて様子をみて1錠ずつ増やしていきます。
当院の処方例
メトレート 朝1錠-夕1錠
翌日 朝1錠
フォリアミン 翌々日 朝1錠
メトレートは週3錠から開始させて頂きます。
またメトレートの副作用を予防するフォリアミンというビタミン剤を翌々日に飲んで頂きます。
そして2-3週間後に受診して頂き、副作用などのトラブルが無いか確認し、メトレートを1錠増やします。
日本人ではおおよそ週5~6錠で効果が頭打ちにあるので、そこまで増やしてもリウマチが残ってしまうようなら、生物学的製剤や他の飲み薬の追加をご相談しましょう。
タクロリムス(安全・有効な飲み薬のナンバー2)
T細胞という免疫細胞を落ち着かせる薬です。
効果は飲み薬の中ではメトレートの次にある印象です。
そして特徴はメトレートが使えない、
・腎臓が弱っている方
・御高齢の方
・肺が悪い方
に使うことができます。
また飲み方も毎日夕食後に飲むだけなので、メトレートのように難しくありません。
またリウマチの薬の中で唯一、血液検査でタクロリムスがどの程度体に残っているかを調べることができます。
副作用が出てしまう前に、血液検査の結果で薬の量を調節できるので安全性の高い薬です。
ケアラム(副作用の少ない新しい飲み薬)
飲み薬の中では最も新しい薬です。
副作用が比較的少なく、メトレートが飲めないような方にももちろん使用できます。
唯一、ワーファリンという血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は胃潰瘍を起こすことがあるので使えません。
メトレートが使用できない方に代わりに使ったり、生物学的製剤でだいぶ良くなりあと一歩という方に追加で使って頂くことが多いです。
アザルフィジン(安全性の高いベテラン)
昔からあるリウマチの薬です。
妊娠中も使用することができる数少ない薬で重宝します。
比較的弱いリウマチの方や、妊娠中の方、生物学的製剤でだいぶ良くなりあと一歩という方に追加で使って頂くことが多いです。
リマチル(まだまだ現役のベテラン)
これも昔からあるリウマチの薬です。
比較的弱いリウマチの方や、生物学的製剤でだいぶ良くなりあと一歩という方に追加で使って頂くことが多いです。
ゼルヤンツ(生物学的製剤に匹敵する飲み薬)
2013年に承認されたJAKという新しいリウマチに関わる部位に注目した薬です。
非常に即効性があり、内服して1週間で効果が出る方もいます。治療効果は注射の生物学的製剤に匹敵し、飲み薬の生物学的製剤といった印象です。
注意するのは帯状疱疹で、過去に帯状疱疹にかかった事のある方は再発する可能性があるので使えません。
新しい機序のお薬ですので、生物学的製剤でも治らないリウマチの方の治療に役立ちます。
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