生物学的製剤
「リウマチに最近いい薬が出来たんだって?」「生物学的製剤っていう特効薬ができたんでしょ?」そうなんです、皆さんお聞きになったことがあるかもしれませんが、リウマチの治療薬はここ10年で目覚ましく進歩しました。今まで良い薬が無くて痛み・変形に困っていたリウマチの方も治療できるようになったのです。これは本当に嬉しい事です!
生物学的製剤(リウマチ治療の特効薬)
関節リウマチを良くするために作られた、まさに「リウマチの特効薬」になります。リウマチにとても良く効きますので、新しい薬の研究も進み現在では7種類になりました。7種類の中には、関節リウマチの原因物質(TNF、IL6)を抑えるタイプ、原因細胞(Tリンパ球)を抑えるタイプなどあります。「注射を始めて痛みがうそのようになくなりました」「最初は注射が怖かったけど、やってみると簡単ですね」飲み薬に比べて効き目が早いのも生物学的製剤の特徴です。早い方では注射を始めて1-2週間で効果が出てきます。
そんなリウマチの特効薬、生物学的製剤の治療がおすすめな方はどんな方でしょうか?
- メトレートなどの飲み薬で半年治療したがリウマチが良くならない
- リウマチの痛み・腫れが強く1日でも早く良くしたい
- メトレートなどの飲み薬が合わない
- 妊娠を考えている
- 75才を超えてメトレートを使っている、腎臓が良くない、飲み薬が沢山ある
- メトレートなどの飲み薬で半年治療したがリウマチが良くならない
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メトレートは飲み薬の中で1番効果があり、飲み薬のエースです。ただメトレートだけでは完全にリウマチが良くならない方も半数程度いらっしゃいます。 日本人では週5-6錠でメトレートの効果は頭打ちになり、それ以上増やしても効果はあまりありません。またメトレートの効果は遅くても2か月で出てきますので、「週5-6錠のメトレートを遅くても半年続けてリウマチが良くならなければ、そこが生物学的製剤の治療を考える一つのタイミング」になります。
- リウマチの痛み・腫れが強く1日でも早く良くしたい
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リウマチが見つかってまずはメトレートなどの飲み薬から初めて、少しずつ増やしていく治療は数か月かけてリウマチを少しずつ治していくのでお時間がかかります。「リウマチの痛み・腫れがひどく1日も早く良くしたい」「早く良くなって仕事や家事に影響がでないようにしたい」という方、「関節エコー検査で関節の炎症が非常に強く飲み薬だけでは治療が難しい」と思われる方には、最初から生物学的製剤と飲み薬の治療をご相談させて頂いております。生物学的製剤は早い方ですと最初の1-2回の注射で効果がでてきます。また生物学的製剤で早くリウマチを良くできると、後々にお薬を減らせる方が多いです。
- メトレートなどの飲み薬が合わない
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「メトレートを飲むと、倦怠感と気持ち悪さがでてしまいます」「リウマチは痛いですが、口内炎が出来てしまうのでメトレートを増やせません」こんなお悩みも良くお聞きします。関節が痛くなくなっても、倦怠感と気持ち悪さが出てしまうのは辛いですよね。メトレートを減らすことと、吐き気止めや胃薬をメトレートと一緒に使っていただくことで倦怠感や吐き気は良くなることが多いです。しかしそれでも倦怠感や吐き気が治らずメトレートが全く使えない場合、またはメトレートを減らすとリウマチの痛みが出てきてしまう時には、生物学的製剤の出番です。生物学的製剤はインフルエンザ予防接種のような皮下注射のお薬ですので、飲み薬のように口から飲んで胃や腸で吸収されるわけではありません。ですので、飲み薬で出てくることがある倦怠感、気持ち悪さ、口内炎など出てこないので、飲み薬が合わない方でも大丈夫ですよ。
- 妊娠を考えている
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「リウマチのお薬を飲んでいるので妊娠はあきらめました」「妊娠を考えているのでリウマチが痛むけど薬はちょっと・・・」こんな悩みも良くお聞きします。じつは、妊娠を考えているリウマチの方こそ、しっかりとした生物学的製剤での治療が必要です。リウマチだからと妊娠はあきらめなくて大丈夫です!確かに、メトレートをはじめとしたリウマチの飲み薬の多くが妊娠・授乳中には使えません。そのため昔は妊娠中のリウマチの方のお薬はプレドニン、アザルフィジン、カロナールしかありませんでした。しかし、生物学的製剤のエンブレルとシムジアというお薬は胎盤を通過しないので、お腹の中の赤ちゃんにはお薬が影響しないので安心して使う事が出来ます。妊娠を考えられている方はお若い女性が多く、これから何十年と未来の生活があることを考えると、ちょっとした関節変形でも長年積み重なると大きな変形となり、日常生活に影響してしまいます。ですので、妊娠を考えているからとリウマチの痛みを我慢せずに、エンブレルやシムジアなどの生物学的製剤でしっかり治療することが大切です。
また、リウマチが良くなると妊娠しやすくなるってご存知でしょうか?リウマチが良くなると胎盤の血行状態が良くなって妊娠しやすくなるようです。実際不妊治療をきっかけでリウマチが見つかり、リウマチが良くなってから妊娠・出産された方も多くいらっしやいます。当院でもエンブレルやシムジアでリウマチを治療しながら妊娠・出産された方も多く、元気に生まれた赤ちゃんを見せて頂いたときは本当に嬉しく、リウマチ医になって良かったなと思う瞬間です。
- 75才を超えてメトレートを使っている、腎臓が良くない、飲み薬が多い
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「もう歳だからね、リウマチの痛みは仕方ないよ」「腎臓が悪くて、痛み止めも飲めないんです」「血圧や糖尿の薬もあって、飲み薬が多くって・・・」こんなお悩みをお持ちの方にも、生物学的製剤はおすすめです。メトレートなどの飲み薬は、口から飲んで胃や腸で吸収、肝臓で分解、腎臓で排出を行います。しかし歳を重ねるとどうしても胃腸、肝臓、腎臓が若い頃よりも弱ってきます。そのため、ちょっと風邪をひいたり、胃腸を壊したり、夏場に脱水になったりすると体の中で飲み薬の濃度が上がってしまい胃腸、肝臓、腎臓に副作用がでやすくなります。また血圧や糖尿病など他の飲み薬を沢山のまれていると、リウマチのお薬と飲み合わせが悪かったり、飲み間違いなどが出てくるかもしれません。その点、生物学的製剤は注射で直接体に入り、もともとがたんぱく質からできているので胃腸、肝臓、腎臓に影響しません。また注射ですので他の飲み薬との飲み合わせも全く気にしなくて大丈夫です。実際に5-6種類のリウマチのお薬を飲まれている方が、2週間に1回だけの生物学的製剤の注射だけで飲み薬をなくすことも可能です。
※治療前 赤いリウマチの炎が沢山あります
※生物学的製剤での治療後 リウマチの炎が消え、腫れもなくなっています
飲み薬と違って、「胃腸・肝臓・腎臓・お薬の飲み合わせ」など気にしなくて良い生物学的製剤ですが、注意する点は感染症になります。これはリウマチの悪い免疫細胞を大人しくさせるので、良い免疫細胞も少し大人しくなってしまう事が原因です。ただ、この感染症は飲み薬にも起きる弱点なので、生物学的製剤だけに起きるわけではありません。他には間質性肺炎というリウマチで起きる特殊な肺炎が治療後に起きることがありますが、これは飲み薬の治療でも起きることがあるので変わりません。もともとのリウマチの体質が原因なのかと思われます。そんな感染症出来る限り予防したい、またもし感染症になっても早期に発見して治療するために、当院では感染症予防対策・早期発見に力をいれております。
当院のとっておき5つの感染症予防対策
感染症予防に関しては私がリウマチ医になって以来一番重要視し、試行錯誤を繰り返してきました。そんなとっておきの方法を5つご紹介いたします。
1バクタ少量予防内服
ニューモシスチス肺炎というカビの肺炎を予防する薬です。普通の肺炎は「高熱が出て、咳や痰が沢山でてこれは肺炎かな?」と気が付きます。 しかし、このニューモシスチス肺炎の怖いところは「なんとなく食欲がない・倦怠感がある」「息切れがするな」程度の症状しかなく、気が付いたら大きな肺炎になっていることです。そのためニューモシスチス肺炎を起こさない予防が何より大切です。当院ではリウマチ治療をされている皆さんにバクタを週2回だけ使って頂き、ニューモシスチス肺炎を予防しております。
2血液検査で感染症・副作用の早期発見
- CRP
- 体の中の炎症をみる検査です。リウマチで関節が痛くなるともちろん高くなります。しかしリウマチの具合だけでなく、感染症をおこしてCRPは高くなります。リウマチの痛みや腫れが全然ないのに、CRPが高い時は感染症になっている可能性があり治療が必要です。
- βDグルカン
- カビの検査です。ニューモシスチス肺炎やカビの蓄膿症など体の中でカビが増えると数値が上がります。
- KL-6
- 間質性肺炎(リウマチの特殊な肺炎)の検査です。新しく間質性肺炎が出てきたり、もともと間質性肺炎のある方の肺が悪くなると数値が上がります。
- T-spot
- 結核の検査です。レントゲンでは分からないような結核が肺に冬眠していないか検査します。また肺以外の体に結核が隠れていないかもチェックできます。
- 肝炎ウイルス
- B型、C型などの肝炎ウイルスが体に隠れていないかの検査になります。リウマチの治療を始める前、また治療後も定期的に検査し、肝炎ウイルスが増えていないかしっかり確認します。
3結核薬の予防内服
結核が冬眠している可能性のある方に、生物学的製剤投与前3週間~投与後10カ月内服して頂きます。これで恐い結核を除菌し、結核は冬眠から目が覚め悪さをするのを予防します。
4抗生剤の少量予防内服
リウマチの方は気管支拡張症や慢性気管支炎といって肺に細菌が住み着いてしまうことがあります。肺の中に住み着いている細菌が増えて悪さをすると肺炎を引き起こします。肺炎を起こしていないか定期的にレントゲンなどで検査します。またどうしても肺炎を繰り返してしまうかたには、通常の半分量の抗生剤を使い肺炎を起こすのを予防しております。
生物学的製剤を始められる皆さんに
生物学的製剤での治療でご質問頂く内容をまとめてみました。
※クリックすると展開します。
- 生物学的製剤ってそんなに良く効くのですか?
- 自分で注射ってできるかしら?
- 注射の副作用はどうですか?
- 生物学的製剤はずっと使わないとダメなのですか?
- 日常生活で気をつけることはありますか?
- 風邪をひいたらどうしたらよいですか?
当院で良く使う生物学的製剤の種類
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TNFという免疫物質をおさえます、妊娠/授乳も大丈夫ですエタネルセプトBS・エンブレル
「効き目の早さ」「効果の持続」「安全性」「妊娠・授乳中も使える」とバランスに優れた生物学的製剤がエタネルセプトになります。しかも、2018年6月ついに後発品エタネルセプトBSが販売されましたので、他の生物学的製剤にくらべてお薬代も半分近く抑えられるようになり、非常に使いやすくなりました!
当院では痛みが強く、炎症の数値(CRP)が高い方には最初に使います。またオレンシアが効かなかった方の、2番手の薬剤としても重宝しております
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オレンシアT細胞という免疫細胞を抑えます
「優しい生物学的製剤」という印象です。感染症のリスクが低く、またメトレートなどの飲み薬がなくても効果を発揮します。針も細く、お薬もしみないので注射の痛みが少ないのも嬉しいお薬です。当院では最初に使う事が多いです。
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TNFという免疫物質をおさえます、妊娠/授乳も大丈夫ですシムジア
「効き目の早さNo1の生物学的製剤」という印象です。他の薬剤と大きく異なる点が、最初の3回は2本ずつ(通常の2倍量)を投与することです。そのため最初にガツンとリウマチを良くする非常に効き目の早い薬剤です。当院ではリウマチが非常に強い方にお勧めしております。またエンブレルと同様に、オレンシアが効かなかった方の、2番手の薬剤としても重宝しております。
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TNFという免疫物質をおさえますヒュミラ
飲み薬のメトトレキサートと相性の良いお薬です。リウマチ以外にも、乾癬性関節炎、ベーチェット病、クローン病などにも使用できます。特に乾癬性関節炎では関節痛も良くなりますし、皮膚の症状もよくなり喜んで頂けることが多いです。
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IL-6 という免疫物質をおさえますアクテムラ
他の生物学的製剤とは別の効き方をするので、他の薬であまり効果がなかった方にも、リウマチが良くなることが期待できます。また薬代が他の注射の半分程度なのも嬉しいですね。
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TNFという免疫物質をおさえますシンポニー
4週毎に投与する皮下注射薬です。 1回2本の2倍量投与も可能です。