関節リウマチの飲み薬
メトレート(飲み薬のエース)
リウマチの飲み薬の代表になります。薬代も月2000-4000円(3割負担)で、効果も高いお薬です。効果とお薬代の面で優れており、リウマチと診断したらまず使用する薬剤となっています。飲み方が特殊で注意が必要です。1週間に1~2日だけ薬を飲んで、あとの5~6日は飲みません。
「1週間のうち薬を飲まない日がこんなにあって効き目があるの?」と思われるかもしれませんがこの飲まない日というのが実は大切なんですね。関節で悪さしている免疫細胞だけを退治して、それ以外の正常な細胞には影響を与えない、その絶妙なバランスが「1週間に1~2日だけ薬を飲んであとの5~6日は飲まない」というのみ方なんです。もし毎日飲んだらどうなるか?絶対にやってはいけないことですが、正常の細胞まで退治されてしまうので、口内炎や嘔吐・下痢、貧血、腎機能低下などの副作用を引き起こします。
メトレートが使えない方
- ・腎臓が弱っている方
- ・御高齢の方
- ・肺が良くない方
- ・妊娠/授乳中の方
などはメトレートを使用することはできません。メトレートの効果は飲み始めて早ければ2週後から出てきます。一方で、飲み始めは胃腸症状やアレルギーが出ることがあるので、最初は少ない量で初めて様子をみて1錠ずつ増やしていきます。
※当院の処方例
メトレートは週3錠から開始させて頂きます。またメトレートの副作用を予防するフォリアミンというビタミン剤を翌々日に飲んで頂きます。そして2-3週間後に受診して頂き、副作用などのトラブルが無いか確認し、メトトレキサートを1錠増やします。日本人ではおおよそ週5~6錠で効果が頭打ちにあるので、そこまで増やしてもリウマチが残ってしまうようなら、生物学的製剤や他の飲み薬の追加をご相談しましょう。
タクロリムス(安全・有効な飲み薬のナンバー2)
T細胞という免疫細胞を落ち着かせる薬です。効果は飲み薬の中ではメトレートの次にある印象です。そして特徴はメトレートが使えない
- ・腎臓が弱っている方
- ・御高齢の方
- ・肺が悪い方
に使うことができます。また飲み方も毎日夕食後に飲むだけなので、メトレートのように難しくありません。またリウマチの薬の中で唯一、血液検査でタクロリムスがどの程度体に残っているかを調べることができます。副作用が出てしまう前に、血液検査の結果で薬の量を調節できるので安全性の高い薬です。
※当院の処方例
タクロリムス1㎎2錠 夕食後 から開始
⇒血液検査でお薬の濃度を確認して
タクロリムス3㎎1錠 夕食後 にUP。
ケアラム(副作用の少ない新しい飲み薬)
飲み薬の中では最も新しい薬です。副作用が比較的少なく、メトレートが飲めないような方にももちろん使用できます。唯一、ワーファリンという血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は胃潰瘍を起こすことがあるので使えません。メトトレキサートが使用できない方に代わりに使ったり、生物学的製剤でだいぶ良くなりあと一歩という方に追加で使って頂くことが多いです。
アザルフィジン(安全性の高いベテラン)
昔からあるリウマチの薬です。妊娠中も使用することができる数少ない薬で重宝します。比較的弱いリウマチの方や、妊娠中の方、生物学的製剤でだいぶ良くなりあと一歩という方に追加で使って頂くことが多いです。
リマチル(まだまだ現役のベテラン)
これも昔からあるリウマチの薬です。比較的弱いリウマチの方や、生物学的製剤でだいぶ良くなりあと一歩という方に追加で使って頂くことが多いです。
ゼルヤンツ(生物学的製剤に匹敵する飲み薬)
2013年に承認されたJAKという新しいリウマチに関わる部位に注目した薬です。非常に即効性があり、内服して1週間で効果が出る方もいます。治療効果は注射の生物学的製剤に匹敵し、飲み薬の生物学的製剤といった印象です。注意するのは帯状疱疹で、過去に帯状疱疹にかかった事のある方は再発する可能性があるので使えません。新しい機序のお薬ですので、生物学的製剤でも治らないリウマチの方の治療に役立ちます。
ステロイドホルモン
- プレドニン・プレドニゾロン(昔からある膠原病治療の主役)
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昔からある膠原病治療には欠かせないお薬になります。もともと体の中で作られている副腎皮質ホルモンをお薬にしたものです。副腎皮質ホルモンは免疫細胞を大人しくさせてくれる効果があるので、免疫細胞が体の中で暴れてしまって起きる関節リウマチや膠原病に効くのですね。プレドニンの良いところ♪
- ・即効性があります 飲んで1-2日で効果が出てきます
- ・腎臓や肝臓が悪くても問題ありません
- ・お薬代金が安い
- ・膠原病、特にリウマチ性多発筋痛症やSLE、多発性筋炎、IgG4関連症候群などによく効きます
一方で、プレドニンの弱点もあります。
- ・骨密度が落ちて骨粗鬆症になりやすくなる
- ・血糖が高くなる方がいる
- ・感染症にかかりやすくなる
- ・胃潰瘍になる方がいる
- ・ムーンフェイス(顔に脂肪がついて丸くなる)
ただこれらの副作用は、大量のプレドニンを長期間使うと出やすくなります。ですので、膠原病の最初の治療ではプレドニンを多めに使って、良くなったら早めに減らしていくのがレドニンの上手な使い方です。
- 〇関節リウマチの方へのプレドニンの使い方
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リウマチの診断は「関節エコー」で大きく変わりました。
関節リウマチでは生物学的製剤やメトレートなど優れたお薬が沢山出てきたので、プレドニンの出番は少なくなりました。ただプレドニンにはすぐ効くという長所がありますので、リウマチの治療を始めたばかりでまだメトレートが効いてこない時期に、プレドニンで痛みを抑えたりします。そして1-2か月してメトレートが効いてきたら、バトンタッチをするようにプレドニンを減らしていき最後はゼロを目指します。メトレートの効果が出てくるまで助けてくれる、名脇役といったイメージですね。処方例:関節リウマチの診断でメトレートを開始したが、手・膝の関節痛が強い方
治療開始 メトレート6㎎/週+プレドニン5㎎
⇒2-4週間後 メトレート8㎎/週+プレドニン2.5㎎
⇒4週間後 メトレート10㎎/週+プレドニン中止
- 〇リウマチ性多発筋痛症でのプレドニン治療
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首・肩・背中・腰などが急に痛くなり寝返りも打てなくなるリウマチ性多発筋痛症、この病気はプレドニンがとっても良く効きます。プレドニン15-20㎎で治療を始めると1-2日でとっても良くなります。その後はプレドニンを0~5㎎を目指してどんどん減らしていきます。
- 〇SLE、血管炎、皮膚筋炎、IgG4関連症候群などの膠原病
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これらの膠原病の治療の主役もプレドニンになります。体のどこに症状が出ているかで、プレドニンの量が大きく変わります。量がとても多い場合には入院で治療を開始したりします。
胃薬
- パリエット・タケキャブ・ネキシウム
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プレドニン、ロキソニンなどのNSAIDsを長い間使うと胃潰瘍が起きやすくなります。実はこのお薬で起きる胃潰瘍は特殊で、普段よく使われるガスターやムコスタなどの胃薬では予防しきれない事があります。胃酸の出すぎをしっかり抑えてくれるPPIと言われるタイプの胃薬を使うことが大切です。
「胃は調子悪くないのに、なんで胃薬が出てるんだっけ?」と思われる方もいらっしゃるかとおもいますが、プレドニン、ロキソニンなどのNSAIDs鎮痛剤で胃潰瘍が起きるのを予防するのに必要な胃薬なんですね。
骨粗鬆症のお薬
- 密度が低下し骨粗鬆症になりやすいのは
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骨密度が低下し骨粗鬆症になりやすいのは
- プレドニンの長期使用
- 閉経後の女性
- 関節リウマチの方
の方になります。当てはまる項目が多いほど骨粗鬆症になりやすく進行も早いです。最近では、プレドニンを3か月以上使用する予定のある方は、骨密度の検査やお薬を始めることがすすめられています。骨密度が下がると、骨がスカスカで弱くなりますので骨折しやすくなります。ちょっと転んだだけで股関節を骨折して手術になってしまったり、重たいものを持っただけで背骨の圧迫骨折を起こして痛みで寝込んでしまうこともあります。そんな骨粗鬆症のお薬ですが、近年とても進歩しいろんな種類がでてきました。
- ボンビバ・アクトネル
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ビスホスホネート製剤という種類のお薬で、破骨細胞という骨を壊して骨粗鬆症を引き起こす細胞を抑える効果があります。また昔は毎朝飲むお薬でしたが、現在では週1回、さらには月1回だけで効果があるお薬ができており、飲むのが楽になりました。当院では忘れないように毎月1日に服用して頂くことが多いです。
注意点は2つ- ①朝食の30分前に飲みます。他のお薬や食事と一緒に飲んでしまうと、効果が発揮されません。
- ②抜歯をする3か月前からお薬を中止しましょう。抜歯の予定のある方には、他のお薬にしましょう。
- フォルテオ
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骨を作る骨芽細胞を元気にして、骨粗鬆症の予防、さらには骨密度上昇も期待できるとても効果のある注射になります。毎日1回ご自宅でお腹・太ももに皮下注射をしていただくお薬です。注射の針も細く、お薬もしみないので病院で1回練習しただけですぐできるようになる方が多いです。
1本で30日分のお薬が入っています。フォルテオは生涯で使える本数が決まっており、お一人24本まで(約2年間)と期間限定の注射になります。骨粗鬆症治療の期間限定の切り札といった注射になります。
- ビビアント・エディロール
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毎日飲むタイプの骨粗鬆症のお薬になります。女性の方は閉経するとなぜ骨密度が下がり骨粗鬆症になりやすいのでしょうか?実は女性ホルモンには骨にカルシウムを蓄えて、強い骨を保つ効果もあります。それが閉経によって女性ホルモンが減ると骨に蓄えられていたカルシウムが減って骨密度が下がってきてしまいます。これを治療するのがビビアントになります。女性ホルモンのように働くので、カルシウムが骨から出てしまうのを防いでくれます。
エディロールはビタミンDのお薬になります。ビタミンDは食べ物からカルシウムを吸収するときに活躍します。食事からのカルシウム吸収を助けて、骨粗鬆症を予防してくれるお薬になります。
鎮痛剤
痛み止めのお薬になります。これらのお薬はリウマチの進行をとめる力は持っていませんが、飲むとすぐに痛みを和らげてくれる効果があります。
「リウマチの診断がつく前」「メトレートが効いてくるまでの間」「昨日手足を使いすぎて痛いな」「今日はお天気の影響で痛いな」という時などにとても便利なお薬です。リウマチでよく使う鎮痛剤をご紹介させて頂きます。
- ロキソニン・セレコックス
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NSAIDsと言われる鎮痛剤の仲間になります。痛みや熱を出すプロスタグランジンという物質が体の中でできるのを抑えてくれるので、関節の痛みが和らぎます。また風邪やインフルエンザの時に熱がでて頭痛や体のあちこちが痛くなるのも、このプロスタグランジンが作られるからなんですね。そんなプロスタグランディンを抑えるために風邪をひいて熱や頭痛があるとロキソニンが良く処方されます。
NSAIDsの弱点)- ・胃潰瘍が起きることがある
- ・長期の使用で腎臓が疲れてしまう
- ・妊娠中は使えない
NSAIDsの中で、胃に負担がかからず胃潰瘍などを起こさないように改良されたものがセレコックスになります。効果はロキソニンと同じですので、関節痛などで長期に使う場合にはセレコックスがおすすめです。
処方例:手指のこわばり、痛みがあり関節リウマチの疑いのある方。血液検査の結果でリウマチの診断がつくまで処方。
セレコックス100㎎ 2錠 分2 朝・夕食後
パリエット(胃薬)1錠
- カロナール
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昔からある解熱・鎮痛剤になります。風邪をひいたときなどに、よく処方されますよね。正直どんな理由で効果があるのかははっきり分かっていませんが、解熱・鎮痛作用があり、妊婦さんやお子さんにも使える安全性の高いお薬です。また、ロキソニン・セレコックスなどのNSAIDsが使えない腎機能低下の方にも使う事ができるので、重宝されます。効き目はロキソニン・セレコックスに少し負けますが、妊娠中のリウマチの方の鎮痛剤、腎機能が低下されたリウマチの方の鎮痛剤として役に立つお薬です。
処方例:関節リウマチで治療中、腎機能低下がありNSAIDsなどの鎮痛剤が使えない方。
カロナール200㎎4錠 分2 朝・夕食後
- トラムセット
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前述のカロナール(昔からある安全な鎮痛剤)と、トラマドールという脳が痛みを感じるのを抑えてくれるお薬が合体したのがトラムセットになります。2つの痛み止めが合体したお薬なので、よく効くのが特徴です。
ロキソニン・セレコックスなどのNSAIDs、カロナールなどでも抑えられない強い痛みの時によく使います。最大で1日4錠を4回に分けて使う事が出来ますが、急に多い量を使うと人によっては吐き気が出てしまう事があります。そのため当院ではまずは1日2錠を2回に分けて、吐き気止めと一緒に処方させて頂いております。鎮痛効果や吐き気などのトラブルが無いかを確認し、必要があれば1日3錠を3回に分けてなど少しずつ増やして処方します。また1日2錠でも吐き気が出てしまう方には、1日1錠に減量、それでも吐き気がでるようなら中止して頂いております。処方例:リウマチの診断でメトレート、セレコックスを始めたばかりの方。メトレートの効果がまだ出てこず、セレコックスでは痛みが治まらずトラムセットを追加。
トラムセット2錠+プリンペラン(吐き気止め)2錠 分2 朝・夕食後
トラムセットを使われている方が風邪をひいたときに中止する点があります。トラムセット1錠にカロナールが325㎎入っています。知らずに風邪薬としてカロナールも飲んでしまうと、カロナールを飲みすぎてしまうことになるので、注意しましょう。
- リリカ
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ビリビリした痛み、しびれ、腰痛などの神経痛に効果が高いお薬です。リウマチの腫れは無いが変形した関節が神経をさわってビリビリ痛んだり、長年の痛みで神経が過敏になって感じる痛みがある方に良く処方いたします。他の痛み止めと違って過ぎ効く痛み止めではないので、飲み続けているとじわじわ痛みが緩和されます。人によっては眠気やふらつきが出ることがあるので、当院では1日1回リリカ25㎎1錠から始めさせて頂きます。その後の効果や、飲み合わせをみて少しずつ増やしていきます。
処方例:30年来の関節リウマチの方。生物学的製剤で関節リウマチは良くなったが、関節変形による指のしびれが残りリリカを開始。
⇒リリカ25㎎1錠 分1 寝る前
⇒リリカ25㎎2錠 分1 寝る前
⇒リリカ75㎎1錠 分1 寝る前
- ロキソニンテープ・モーラステープ・アドフィードパップ
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痛み止めの湿布になります。痛み止めを飲むほどではないけどちょっと痛い時、膝腰の痛みなどにとっても便利ですよね。たくさん種類がありますが、ちょっとした使い分け方としては次のようなものがあります。
- ロキソニンテープ
- 湿布を張った場所が日光を浴びるとかぶれてしまう(光線過敏といいます)事が少ないです
- モーラステープ
- 一番鎮痛効果があると言われています。光線過敏には注意です。
- アドフィードパップ
- 冷たい湿布です。関節が腫れて熱をもっている時にお勧めですよ。
- スミルスチック・ボルタレンゲル
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こちらは痛み止めの塗り薬になります。湿布に比べると効果が落ちますが、湿布よりかぶれにくいのが特徴です。
- スミルスチック スティックのり(少し大きめ)の様な塗り薬です。手にお薬が付かずに塗れるのがよいですね。膝・腰などの大きな関節、肩こりなどにお勧めです。
- ボルタレンゲル 当院では保湿剤と混ぜてお出しすることが多いです。寝る前に手指などに塗っていただくと翌朝痛みが改善し、肌も潤っている効果があります。