乾癬(乾癬性関節炎,関節症性乾癬)
乾癬(かんせん)ってなに?
乾癬は皮膚の中で炎症が起きて、皮膚細胞の分裂が活発化してしまう病気になります。 そのため、皮膚が赤く盛り上がり、カサカサと皮膚がはがれたり、フケが増えたりしてきます。基本は塗り薬になりますが、最近では乾癬用の生物学的製剤という特効薬もできてきましたので、ぜひご相談ください。
乾癬性関節炎(=関節症性乾癬)
「関節の痛み・変形」+「皮膚・爪の症状」の両方がみられます。関節リウマチに似た手指の腫れ・痛みを起こしますが、リウマチの様に血液検査で診断できるものがなく、皮膚・爪の症状を見逃さない事が大切です。
よくあるのが、皮膚科で皮膚のカサカサに塗り薬をもらい、整形外科で関節痛に痛みどめをもらって、皮膚症状と関節痛が同じ病気(乾癬)から起きていると気づかれないことがあります。皮膚のカサカサと関節痛が同じ病気だなんてなかなか気がつかないですよね、そして乾癬の治療すると両方良くなってしまうなんて驚きですよね。
さらに乾癬性関節炎は、変形性関節症(軟骨がすり減る加齢変化)が起きやすい指先の関節(DIP関節)に関節炎を起こします。このDIP関節の痛みは圧倒的に変形性関節症の方が多いので、「一番指先の関節にリウマチは起きないから、これは加齢変化かな」とついつい私も含め医者は思ってしまいます。しかしそう決めつける前に、耳や頭に発疹が無いか、爪に変化が無いかなどじっくり診察して乾癬性関節炎を見逃さないことが大切です。
変形性関節症は軟骨がすり減って起こる加齢変化なので、「痛み止め」「ヒアルロン酸注射」だけでなく「体重を減らしたり、筋肉をつけたりして残った軟骨を大切にしましょうという生活指導」がおもになってしまいます。しかし、乾癬性関節炎はしっかり早期発見・治療をすることで、痛みをなくし関節変形を予防することができます。関節リウマチと同じく早期発見・早期治療が大切になんですね。治療は関節リウマチで使用する生物学的製剤などが良く効きます、関節の痛みだけでなく皮膚症状もきれいになる方が多いので、患者さんの喜びも多いです。
「関節の痛みがなくなりました」
「襟にフケがついてし目立ってしまうので黒いスーツが着れなかったのが、着れるようになりました」
などの声を聞けて、私もとても嬉しく思って治療させて頂いております。
皮膚科で乾癬との診断を受けている方や、カサカサ発疹に塗り薬をもらっている方に関節痛が出てきた場合には、乾癬による関節痛(⇒乾癬性関節炎)の可能性があります。ぜひ一度ご相談ください。
症状
①関節・腱の痛み
- 関節の痛み(手指・足・膝・腰)
- 指の先端の関節が痛む
- アキレス腱が痛む
- 歩くと足の裏が痛む
- 腱鞘炎がなかなか治らない
- 指全体が腫れる
②皮膚・爪の変化
- 爪がボロボロする、爪に小さな凹みがポツポツ
- 最近フケが多くなった
- カサカサする発疹が出てきた(頭皮、顔、お尻)
検査
問診
乾癬の治療中/言われたことがあるか伺います
ご家族・ご親戚に乾癬の方がいらっしゃらないか伺います
診察
関節を触り、圧痛(押して痛む)、腫脹(ぶよぶよ腫れている)の有無を確認します
アキレス腱鞘をつまんで痛くないか、足の裏を押して痛くないか確認します
髪の毛の中、耳回り、顔・首回りなどにカサカサした発疹が無いかをみます
爪のボロボロ、爪の小さな凹みポツポツを確認します
関節エコー検査、爪エコー検査
レントゲンで見えない、関節内の炎症の有無や程度をしらべます。
- 関節リウマチだけでなく、乾癬性関節炎の早期発見にも非常に有効です。
- 乾癬性関節炎で特徴的な指の先端の腫れについて、加齢変化(変形性関節症)なのか、炎症が起きている乾癬性関節炎なのかを区別できます。
- 最近では乾癬で爪に炎症が起きているかもエコー検査で見ることができます。
- 関節の炎症の程度も分かり、乾癬性関節炎の強さが分かります。強い関節炎の場合には最初から生物学的製剤をお勧めします。
- レントゲンと違い放射線被ばくもなく、その日に痛い関節を患者さんと一緒に見ながらチェックできます
- 治療を始めた後に、関節の炎症が消えて良くなったかどうかも眼で見えます。薬を減らしてよいかの判断ができます。
血液検査
- CRP(炎症のたんぱく質)
関節に炎症があると高値となります。ただ指先などの小さな関節では正常値のまま方もいらっしゃるので、関節エコー検査の結果と併せて判断することが大切です。 - 抗CCP抗体、RF(リウマチ因子)、抗核抗体、SSA抗体
乾癬も免疫細胞が自分を攻撃してしまう病気の一つとなります。そのため、同じような原因で起きる関節リウマチ、そのほかの膠原病などが一緒に隠れていることがあります。一度、他の病気が隠れていないかの検査が必要になります。 - B型肝炎ウイルス、結核、間質性肺炎
治療を開始するにあたって、感染症や肺や腎臓に問題が無いかを確認し、どのお薬が一番良いかを相談させて頂きます。
治療薬
塗り薬
ドボベット、マーデュオックス
乾癬の皮膚・爪に効果のあるステロイドとビタミンDが一緒に混ざったお薬が最近使えるようになりました。以前は別々に塗る必要があったので、塗る回数が多くて大変でしたが、これは1日1回塗れば良いのでお勧めです。お風呂あがりや寝る前に1日1回塗っていただけると良いかと思います。
内服薬
オテズラ
乾癬の飲み薬として、昨年より使えるようになった新しいお薬です。
乾癬の皮膚や関節ではPDE4(ホスホジエステラーゼ4)という物質が沢山できてしまい、これが原因となって免疫細胞が暴走し皮膚や爪、関節に悪さをしていることが分かってきました。このPDE4という乾癬の原因になる物質を抑えて、乾癬を良くするお薬がオテズラになります。「今までの塗り薬では良くならない皮膚症状の方」「塗り薬が使いにくい頭皮や爪の症状を改善したい方」にお勧めの飲み薬になります。
最初は少ない量で初めて、6日間で徐々にお薬を増やしていきます。
数か月かけて徐々に効果が出てきて、3か月で多くの方の皮膚や頭皮、爪症状が改善します。
飲み薬で乾癬の皮膚・爪・頭皮を改善したい方にお勧めのお薬です。
メトトレキサート(=リウマトレックス、メトレート)
皮膚だけでなく関節の腫れ・痛みがある(=乾癬性関節炎)方に使う飲み薬になります。関節リウマチの治療薬ではありますが、乾癬の関節症状にとってもよく効きます。また関節の症状がよくなるにつれ、皮膚や爪の症状も良くなる方が多いですよ。
アザルフィジン
これも皮膚だけでなく関節の腫れ・痛みがある(=乾癬性関節炎)方に使う飲み薬になります。メトトレキサートより効果は落ちますが、腎臓・肺が良くないなどメトトレキサートが使用できない方でも大丈夫です。また妊娠中も内服可能です。
生物学的製剤
乾癬の特効薬の皮下注射薬にコセンティクス、トルツという新しいお薬が加わりました。 乾癬の関節症状のある方に以前より使わせて頂いているヒュミラに加えて、新しい助っ人が増えた感じです。 「塗り薬で治らない乾癬の方」「もっと乾癬を良くしたい方」「関節が痛む乾癬の方」にピッタリのお薬かと思います、いつでもご相談くださいね。
コセンティクス / トルツ
乾癬の皮膚や関節の炎症に深くかかわっているIL-17Aという原因物質を抑える、新しい乾癬の治療薬になります。これは同じ乾癬だけをピンポイントに治療するために作られたお薬になります。生物学的製剤というと関節リウマチの分野では10年前に登場し、リウマチの治療を大きく改善させて、まさに特効薬のようになっています。
それと同じような大きな治療効果がありますので、まさに乾癬の特効薬ということになるかと思います。関節リウマチで使われるTNFやIL6という原因物質を抑える生物学的製剤と比較して、この乾癬で使うIL-17Aという原因物質を抑えるコセンティクス、トルツは感染症などの副作用が少ないという特徴があります。また、関節症状がなくても乾癬の皮膚症状でお困りの方にも使えるという特徴があります。
コセンティクスは、最初の1か月は毎週、翌月からは4週毎に使う自己注射薬になります。トルツは最初の3か月は2週おき、その後は4週おきに使う自己注射薬になりまず。
3割負担でコセンティクス1本約2万円、トルツ約4万円と効果が高い分高額や薬剤となりますので、体重や症状などをみてどちらのお薬をどの程度使うかなど相談していきましょう。
ヒュミラ
皮膚だけでなく関節の腫れ・痛みがある(=乾癬性関節炎)方に使う治療薬になります。TNFという乾癬の原因物質を抑える、注射のお薬になります。関節リウマチでも特効薬として広く使われていますが、乾癬性関節炎の関節の症状にもとても良く効く特効薬になります。関節リウマチと同じく、2週間に1回の自己注射薬です。