メトトレキサート(リウマトレックス)の治療を始める方へ
リウマチと診断がついて、医師から「メトトレキサート」という飲み薬の治療を勧められた方も多いかと思います。
「メトトレキサートってどんな薬なんだろう?」
「お薬を飲むときは、どんな事に気をつけたらいいんだろう?」
など疑問や不安をお抱えの方もいらっしゃるかもしれません。
そんな皆さんが安心してメトトレキサートで治療を始められるように、「メトトレキサート7つのポイント」に重要なメトトレキサートの情報をまとめ、「メトトレキサートよくある10の質問」に皆さんから良くいただく質問をまとめました。少しでも皆さんの参考になればうれしいです。
メトトレキサート7つのポイント
①メトトレキサートってどんなお薬なの?
リウマチの治療はここ数年で進歩し、飲み薬や注射薬など多くのお薬が登場しました。その沢山あるお薬の中で、リウマチと診断されたらまず最初に使われるのが「メトトレキサート」になります。リウマチ患者さん全体で7-8割の方がメトトレキサートで治療をされており、リウマチ治療の主役といった感じですね。
なぜメトトレキサートが多くのリウマチの方で使われているかというと、リウマチの飲み薬の中で一番治療効果があり、値段も月2,000~3,000円(3割負担)とそこまで高くないからです。
実は、10年前までは「リマチル」「サラゾスルファピリジン」などの昔の飲み薬しかなく、リウマチの痛みや腫れを完全に抑えきれずに、数年すると手足が曲がって変形してしまう方が多くいらっしゃいました。またこれらの古い薬は急に効かなくなってしまう事があり、リウマチを再発してしまう方も多くいらっしゃいました。
でも、安心してください。メトトレキサートはそんな昔の薬と違って、リウマチの痛みや腫れをしっかり治して、将来的な関節の変形も予防してくれます。さらに、メトトレキサートは使っていると効き目が急になくなってしまうという事も少ないので、ずっと安心して使えるお薬になります。
しかも前述のようにメトトレキサートのお薬代は、月に2,000円~3,000円(3割負担)と、そこまで高額ではないので、治療効果とお薬代の両面で優れており、リウマチと診断したらまず使用するお薬となっています。
もし皆さんがリウマチと診断され、ご高齢や妊娠中などメトトレキサートが使えない方でなければ、昔のあまり効かない薬ではなくメトトレキサートを選んで治療を始められる事をおすすめします。
②メトトレキサートは何でリウマチに効くの?
リウマチで腫れている手や足の関節の中では、実は免疫細胞が暴れまわって悪さをしています。
その暴れている免疫細胞は、葉酸(ようさん)というビタミンの一種を栄養源にしています。
葉酸(ようさん)と言えば、妊娠中に「葉酸のサプリを飲んでくださいね」と言われたな。という方もいらっしゃるかもしれません。その葉酸です。葉酸はお腹の中の赤ちゃんの栄養源になるように、リウマチで暴れている免疫細胞の栄養源にもなっているんですね。
さて、メトトレキサートはこの栄養源である葉酸(ようさん)を、暴れている免疫細胞に使わせないようにして、免疫細胞を大人しくさせリウマチを治していきます。
ケンカして騒いでいる子供達に「良い子にしないと、ご飯抜きですからね」といって、反省させて静かになってもらうイメージですね。
ご飯抜きではどんないたずらっ子でも大人しくなるように、メトトレキサートも免疫細胞をご飯抜きにして大人しくさせるので、とても良く効くお薬なんですね。
③注意!1週間に1~2日、決められた曜日だけ薬を飲んでくださいね
メトトレキサートは飲み方が特殊で注意が必要です。 1週間に1~2日だけ薬を飲んで、あとの5~6日は飲みません。
「1週間のうち薬を飲まない日がこんなにあって効き目があるの?」と思われるかもしれませんが、この飲み日と飲まない日のバランスが実はとても大切なのです。
前述②でメトトレキサートは暴れている免疫細胞に「葉酸」を使わせないようにして、リウマチを治していきますと説明させて頂きました。実は葉酸を栄養源に使っているのは、暴れている免疫細胞だけではありません。正常な体の細胞も葉酸を栄養源として使っています。
「あれ?そうするとメトトレキサートを使うと、正常な細胞も葉酸が使えなくなってしまうんじゃないの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。安心してください、「メトトレキサートを1週間に1~2日だけ薬を飲んで、あとの5~6日は飲まない」という飲み方が、その全てを解決してくれます。
暴れている免疫細胞は正常な体の細胞よりも、沢山の葉酸を必要としています。暴れて動き回っている分、お腹もすぐに減って、1日3回の食事では足りずに1日に5~6回も食事をとって葉酸を食べているのをイメージですね。
その状況で「明日から食事は1日3回に減らします」となると、正常な細胞はお腹も減りませんが、大食いの暴れている免疫細胞だけはお腹が減って動けなくなってしまいます。
その為の絶妙なメトトレキサートの飲み方が、「1週間に1~2日だけ薬を飲んで、あとの5~6日は飲まない」という飲み方なんですね。
「もしメトトレキサートを毎日飲んだらどうなるか?」絶対にやってはいけないことですが、正常の細胞まで葉酸不足になって元気がなくなってしまうので、口内炎や吐き気、下痢、貧血などの副作用を引き起こし大変な事になってしまいます。必ず週1-2日だけ、決められた曜日に飲むようにしてくださいね。
④メトトレキサートはフォリアミン(葉酸)とセットで使おう!
前述したとおり、メトトレキサートの治療の目標は、暴れている免疫細胞だけ葉酸不足で大人しくさせて、正常な体の細胞には葉酸をきちんと届けて元気でいてもらう事です。
その為に、メトトレキサートは週1-2日だけ決められた曜日に使うという事が大切でした。
さらに、確実に正常な体の細胞に葉酸を届けてあげる為のお薬が「フォリアミン」になります。 「フォリアミン」は前述のビタミンの一種である「葉酸」の錠剤です。お薬というよりもビタミン剤のイメージに近いかもしれませんね。
フォリアミンはメトトレキサートを飲み切った翌日か翌々日に使います。
メトトレキサートと葉酸をセットで使う事で、リウマチはしっかり治療しつつ、口内炎や吐き気などのトラブルなく安全にリウマチ治療をしていくことができます。
手袋や靴下のように2つで1つ、メトトレキサートとフォリアミンも2つで1つのセットだと知って頂ければ幸いです。
⑤メトトレキサートは飲んでどれくらいで効果が出てくるの?
ご飯抜きにしてお腹が減るまで時間がかかるように、メトトレキサートも効果がでてくるのに早くて2週間かかり、そこから2か月かけてゆっくり効果が出てきます。ざっくり今日飲んだメトトレキサートが、1か月後の外来診察日の頃に、じわじわ効いてくるイメージでいて頂ければと思います。
「そんなに効いてくるのに時間がかかるの?」と思われた皆さんもいらっしゃるかと思います。
お気持ちはよく分かります、痛みがある中でお時間を頂いてすいません。
メトトレキサートはロキソニンなどの痛み止めと違って、飲んで30分で痛みがなくなるような即効性のあるお薬ではありません。でも一旦効果がでてくれば、何十年も長期間にわたってリウマチをしっかり治療してくれるお薬になります。
メトトレキサートは瞬発力が必要な短距離走は苦手だけど、持久力だけは誰にも負けないマラソン選手のようなイメージですね。長距離タイプという事で、効果が出るまで長い目で温かく見守って頂ければと思います。
でもその間、痛みを我慢しなくてはいけないわけではないので安心してください。
メトトレキサートの効果が出てくるまでは、即効性のある「ロキソニン」や「セレコックス」などの痛み止めや、「プレドニン」などのステロイドをメトトレキサートと一緒に使う事で、痛みを良くすることができます。
また「生物学的製剤」というリウマチの特効薬である自己注射の治療を早めに始める方法もあるので、痛みが強かったり、仕事や生活に支障がでていて早く何とかしたい場合にも方法があるので、安心して主治医にご相談くださいね。
⑥実例!メトトレキサート治療の進み方
メトトレキサートは週8錠まで使えるお薬です。
ただいきなり週8錠で始めると、まだ体が慣れておらず、胃もたれや口内炎などがでてしまう事があります。ですので、通常はその半分以下の週3錠前後で治療を始める事が一般的です。
メトトレキサートを週3錠で治療を始めたら、1か月後に受診して頂きます。
メトトレキサートを飲み始めた事で、吐き気や口内炎などの症状が出ていないかを診察で確認し、肝臓や腎臓の数値が上がっていないかなどを血液検査で確認します。特に問題なければメトトレキサートを週4錠に増やします。
そしてまた1か月後に受診して頂き、リウマチの症状やメトトレキサートの飲み合わせ、肝臓や腎臓の状態を診察や関節エコー検査、血液検査で確認します。問題なければメトトレキサートをまた1錠増やして週5錠にします。
こういった感じで、毎月1錠ずつリウマチの治り具合やお薬の飲み合わせなどを確認しながら、メトトレキサートを増やしていきます。
メトトレキサートが週5-6錠になると、7割程度の方がリウマチの痛みや腫れも無くなります。
それでもリウマチが抑えきれない時は、メトトレキサートをさらに7-8錠まで増やしたり、「生物学的製剤」というリウマチの特効薬である自己注射のお薬を始めるタイミングになります。
逆に、メトトレキサートを飲むと吐き気や口内炎が良く出る場合や、肝臓や腎臓の数値が高くなった場合には、メトトレキサートでトラブルが起きている可能性を考えメトトレキサートを1錠減らす事もあります。
メトトレキサートの飲み合わせとリウマチの治り具合を見ながら、毎月患者さんと医師が相談しながらメトトレキサートを少しずつ調整していくのが、メトトレキサート治療の流れになります。
⑦注意!メトトレキサートが使えない方
そんなリウマチ治療の中心になるメトトレキサートですが、残念ながら使えない方もいらっしゃいます。
まず、妊娠や授乳中の方はメトトレキサートが使えません。お腹の中の胎児や、母乳を飲んだ赤ちゃんに、メトトレキサートが影響してしまうからです。
メトトレキサートを使っている方は男女ともに避妊をするようにしてください。
そして、そろそろお子さんを考えようと思った時は、3か月以上前に主治医に相談しお薬を変更しましょう。
メトトレキサートを中止しても、妊娠や授乳中に使えるリウマチのお薬に変更できるので、安心してくださいね。
また、リウマチのお薬はどれも効果が出てくるのに1-2か月時間がかかるので、将来的に妊活を考えている方は、半年前など早めに医師に伝えておくのがおすすめです。そうすると、より時間的な余裕をもってお薬の変更ができるので安心ですね。
次に、ご高齢な方、腎臓の悪い方、肺の病気がある方、肝硬変など肝臓が悪い方もメトトレキサートは使えません。これらの内臓の働きが落ちている方では、メトトレキサートが上手く分解できず体に蓄積して、副作用などのトラブルが出てしまう事があるからです。
年齢は一概には言えませんが、後期高齢者(75歳以上)の方でメトトレキサートの治療を始めるときは注意が必要です。これらに当てはまる方はクリニックではなく、内臓の検査や入院設備もある総合病院の膠原病科さんでの治療がおすすめです。
スッキリ解決!メトトレキサートよくある12の質問
- Q1:メトトレキサートを飲み忘れたらどうしたらいいですか?
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飲み忘れた分は、そのまま飛ばしてしまってOKです。
解説)
メトトレキサートは効き目が出てくるのに2週間以上かかりますが、効果が無くなるのも2週間以上かかります。例えメトトレキサートを1回飲み忘れても、すぐにリウマチの痛みが出てくる事はないので安心してください。
逆にメトトレキサートを決まった曜日以外に飲んで、口内炎や吐き気などのトラブルが出てしまう方がよくないので、飲み忘れたらその分は飲まずに、飛ばしてしまってOKです。
「過ぎた事は気にせず、また来週から仕切り直しで大丈夫」と覚えて頂ければと思います。
- Q2:風邪を引いた時、メトトレキサートはどうしたらいいですか?
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熱が下がって、食欲が戻るまで、メトトレキサートは1-2週間お休みしてください。
解説)
前述のとおり、メトトレキサートは効果がでるのも2週間かかり、効果が切れるのも2週間かかる、ゆっくりしたお薬です。ですので、メトトレキサートを1-2週間お休みしても、急にリウマチの痛みが出てくることはないので安心してください。
それよりも、風邪で熱がある時や食欲がない時は、体が脱水を起こしている可能性があります。そのような時にメトトレキサートを飲むと、体の中でお薬の濃度が上がり過ぎてしまい、口内炎や貧血などのトラブルを起こす事があります。熱が下がって、食欲が戻るまで、1-2週間メトトレキサートはお休みしてください。
風邪以外でも、「コロナ感染」「胃腸炎」「熱中症」などで熱が出たり、下痢が続いていたり、食欲がない時は、脱水になっている可能性があります。そんな時は、体調や食欲が戻るまでメトトレキサートは1-2週間お休みして、お近くの内科で受診してくださいね。
また体にチクチク痛い湿疹が出てきたときは、「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」の可能性があります。この場合には、お近くの皮膚科を受診して頂き、湿疹が消えてくるまでメトトレキサートは1-2週間お休みするようにしましょう。
- Q3:メトトレキサートと、他のお薬との飲み合わせは大丈夫ですか?
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メトトレキサートと一緒に飲んではいけない薬はありません。飲み合わせはあまり心配しないで頂いて大丈夫です。
解説)
リウマチの飲み薬の中には、他の飲み薬を使ってはいけないものがありますが、メトトレキサートは他の薬との飲み合わせは問題ないので安心してください。
よく「市販の風邪薬と一緒に飲んでもいいですか?」「内科で胃腸薬をもらったのですが、一緒に飲んでもいいですか?」とご質問を頂く事がありますが、どのお薬もメトトレキサートと一緒に使って頂いて大丈夫です。
メトトレキサートで気を付けるのは、他のお薬との飲み合わせではなく、風邪や胃腸炎の症状の方です。熱や下痢、食欲低下が続いて、体が脱水になっている可能性がある時は、体調や食欲が戻るまで、メトトレキサートを1-2週間お休みしてくださいね。
- Q4:食事やサプリメントで何か気をつける事はありますか?
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食事で特に制限はありません。今まで通りに食べて頂いて大丈夫です。 もし「青汁」や「葉酸入りのサプリメント」を飲んでいる方がいらしたら、メトトレキサートを使う日だけはお休みしてくださいね。
解説)
リウマチは食生活が影響する糖尿病や高血圧とは違うので、食事に関しては特に制限はありません。ただカロリーを取り過ぎて体重が重くなると、足の関節に負担がかかるので、そこだけは気を付けてくださいね。体重増加には気をつけながら、今まで通りの食事をバランスよくして頂ければと大丈夫です。
少し注意が必要なのはサプリメントになります。
メトトレキサートは、暴れている免疫細胞がビタミンの一種である葉酸(ようさん)を使えないようにする事で、リウマチを治していくお薬です。
もしメトトレキサートを飲んだ日に、葉酸(ようさん)をたくさん飲んだり食べたりして体に取り込むと、メトトレキサートの効果が弱くなってしまいます。
なので、メトトレキサートを飲む日だけは、葉酸が沢山はいっている「青汁」と「葉酸入りのサプリメント」はお休みするようにしてくださいね。メトトレキサートを飲まない日であれば、両方とも使って頂いて大丈夫です。
「このサプリは葉酸が入ってるのかしら?」と思ったら、サプリの袋やビンに記載されている成分表を見てください。そこに葉酸と記載されているかを確認して頂ければ大丈夫です。
ちなみに、葉酸はほうれん草などの葉物野菜に含まれていますが、食事でとる程度でしたらメトトレキサートの効果が落ちるほどの葉酸を摂取してしまう事はないので、気にせず葉物野菜も食べて頂いてOKです。
- Q5:お酒は飲んでもいいですか?
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メトトレキサートを飲む日は、なるべくお酒を避けてください。
解説)
メトトレキサートは、暴れている免疫細胞に葉酸(ようさん)というビタミンの一種を使わせないようにする事で、リウマチを治していくお薬です。
ただ正常な体の細胞も葉酸を使っているので、メトトレキサートが効きすぎてしまうと正常な細胞まで葉酸不足になって、口内炎やダルさ、貧血などが出てしまう事があります。
実は飲んだお酒を体の中で分解する時にも、この葉酸が必要になります。
ですので、メトトレキサートを飲む日にお酒まで飲んでしまうと、体の中で必要以上に葉酸が不足してしまい、口内炎やダルさ、貧血などの症状や、肝臓の数値が上がってしまうなどのトラブルが起きる可能性があります。
メトトレキサートを飲む日は、お酒はなるべく避けるか、少量をたしなむ程度にして下さいね。
週1-2回はお酒を飲まない休肝日が必要と言われているので、メトトレキサートを使う日は休肝日だと思って頂けると幸いです。
- Q6:先週からメトトレキサートを飲み始めたのですが、痛みが全然変わりません
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メトトレキサートは効果が出てくるまで数か月かかるお薬になるので、すぐに効果が出なくても心配なさらずに、そのまま継続してください。痛みがある時は、「痛み止め」「湿布」「プレドニン」なども一緒に使って痛みを抑えていきましょう
解説)
メトトレキサートはリウマチの痛みを無くし、将来的な変形も抑えてくれるとても良いお薬です。ただ効き目がゆっくりな事と、少ない量から始めて少しずつ増やしていくので、効果がしっかりでてくるのに数か月かかります。
メトトレキサートを飲み始めて1-2週間では、まだ効果が無いのが普通なので、まずは心配しないでください。
メトトレキサートが効いてくるまでの間は、「ロキソニン」や「セレコックス」などの痛み止め、「ロキソニンテープ」などの湿布、「プレドニン」などのステロイド剤など、痛みを緩和するお薬を一緒に使う事ができます。
また「生物学的製剤」というリウマチの特効薬の自己注射を、早めに始める事もできるので、痛みが強い方はご遠慮なくご相談くださいね。
- Q7:メトトレキサートで1年以上治療をしていますが、痛みが続いています
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治療後の痛みの原因がリウマチであるとは限りません。まずは「関節エコー検査」ができる病院を探して、今ある痛みはリウマチが原因かどうか調べましょう。そのうえで、原因に合わせた治療をしていきましょう。
解説)
何カ月もメトトレキサートで治療していても痛みが残っている場合、実はリウマチ自体は良くなっていて、けんしょう炎やバネ指など他の原因で痛みが出ている事はあります。
まずは今ある痛みの原因リウマチなのかどうかを、「関節エコー検査」で調べましょう。
関節エコー検査を行い、関節の中に赤い炎症が見えれば「まだリウマチが治りきっていない状態」、赤い炎症が無ければ「リウマチ以外が痛みの原因である状態」と分かります。
リウマチが治りきっていない場合には、リウマチのお薬をパワーアップさせると痛みが良くなります。メトトレキサートが週3-4錠と少ない場合には、メトトレキサートを1錠ずつ増やすだけで痛みが良くなります。
すでにメトトレキサートを週5-6錠使われていたり、吐き気や口内炎でメトトレキサートを増やせない場合は、リウマチの特効薬である「生物学的製剤」という自己注射薬の出番です。生物学的製剤の治療を始めると9割以上の方がリウマチが良くなります。
一方で、リウマチ以外が痛みの原因である場合には、リウマチのお薬を増やしても良くなりません。まずは安静、そして痛み止めや湿布などが治療になります。
「痛いからリウマチのお薬を増やそう」ではなく、その痛みの原因が何なのかを「関節エコー検査」でしっかり調べる事が大切なんですね。「関節エコー検査」ができる施設は限られるので、ぜひインターネットで検索して受診するようにしてくださいね。
- Q8:近所の病院で「メトトレキサートは強い薬なので、ますは弱いリウマチの薬で治療しよう」と言われ迷っています
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妊娠予定やご高齢などのメトトレキサートを使えない状況でなければ、ぜひメトトレキサートで治療を始める事をおすすめします。
解説)
昔のリウマチの治療は、弱いお薬から始めて痛みを緩和し、手足に変形が出てきたらメトトレキサートなどのお薬に変えていくというものでした。
その為、多くの方が治療していても、痛みが完全には良くならず、また徐々に手足の変形が進んで最終的には車イスになってしまわれていました。
実はリウマチになりたての初期が、一番骨へのダメージが大きくて、手足の変形が進んでしまう事が分かってきました。そこで現在のリウマチの治療では、最初からメトトレキサートを始めて、しっかりとリウマチの勢いを抑えるように変わりました。
「メトトレキサートが良く効くのは分かったけど、体への負担が心配」という方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、メトトレキサートでたまに口内炎や胃もたれなどのトラブルが起きる事があります。
ただ、メトトレキサートをまずは少ない量から始めて徐々に増やしていく方法や、高齢者や腎臓・肝臓が悪い方には使わないなど、現在ではメトトレキサートの上手な使い方がしっかり確立しているので、心配しないで頂ければと思います。
実際に外来診療をさせて頂いていると、昔の弱いリウマチのお薬で長年治療していた結果、手足が変形してしまわれた方が受診されることがあります。そんな時は「もっと早くお越し頂いて、メトトレキサートで治療をして頂いていれば、変形が出る事もなかったのにな」と悔しく思う事があります。
メトトレキサートで治療ができる方は、ぜひ安心して、最新の治療に熟知しているリウマチ専門医と一緒にメトトレキサートで治療を始められることをおすすめいたします。
- Q9:メトトレキサートを飲むと気持ち悪くなって、食欲がなくなってしまいます
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その場合には、「フォリアミンを増やす」「胃薬を使う」「メトトレキサートの飲み方を変える」「メトトレキサートを減らす」など、色々な対策があるので安心してください。
解説)
メトトレキサートの量が増えてくると、気持ち悪さが出てくることがあります。そんな時は、次回の診察時に医師に相談するようにしましょう。色々な対応方法があるので、どうするかを一緒に相談していくと良いと思います。具体的な対応方法を紹介させて頂くと、
①「フォリアミンを2錠に増やす」
葉酸不足で気持ち悪さが出ている事があるので、葉酸のお薬である「フォリアミン」を1錠から2錠に増やします。葉酸を補充する事では、気持ち悪さが無くなります。
②「胃薬を使う」
胃がもたれて気持ち悪さが出ている事があります。そんな時に、胃の動きを良くする胃薬「プリンペラン」や、胃の不快感を取ってくれる胃薬「ストロカイン」を使うと、吐き気がなくなります。
③「メトトレキサートの飲み方を変える」
同じメトトレキサートの量でも、飲むタイミングを変えるだけで吐き気が無くなる事があります。メトトレキサートは2日以内に決められた量を飲み切るお薬になるので、朝1回でまとめて飲んでいたのを2日間にわけたりと変更ができます。
自分で判断して変更しては良くないので、次回の診察時に医師に相談して、自分に合った飲み方を試してみましょう。
上記の対応をしても吐き気が続く場合には、
④「メトトレキサートを減らす」
という方法もあります。
それでも吐き気が続いたり、メトトレキサートを減らしたことでリウマチは再発するようなら、
⑤「生物学的製剤の自己注射を始める」
⑥「メトトレキサート以外の飲み薬を追加する」
⑦「メトジェクト(メトトレキサートの注射)に変える」
などの方法もありますので、遠慮なくご相談くださいね。
- Q10:トトレキサート治療中に口内炎ができました。病院に行った方が良いでしょうか?
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薬と関係なく体調で口内炎が出る事はあるので、まずは様子を見てください。 どんどん口内炎が増えてきたり、同じ場所にできた口内炎が1月以上治らない時は、次回受診時にご相談ください。
解説)
メトトレキサートの量が増えてくるとみられる症状に、口内炎があります。
ただ普通に生活をしていても、ストレスや野菜不足、空気の乾燥、睡眠不足など体調によって口内炎が出る事もあります。ですので、口内炎がでたらすぐメトトレキサートが原因というわけではないので安心してください。1-2週間様子を見て治るようなら問題ありません。
逆に、口内炎がどんどん増えてきたり、1か月しても同じ場所の口内炎が治らない時には、メトトレキサートが関係していることも考えられるので、次回の診察時に医師のお伝えいただけると良いかと思います。
メトトレキサートが原因の口内炎の場合には、
①「葉酸のお薬であるフォリアミンを増やす」
②「メトトレキサートの量を1錠減らす」
③「口内炎の飲み薬(トランサミン、ビタミン剤)を飲む」
④「口内炎の塗り薬(デキサメタゾン口腔軟膏、アフタッチ口腔貼布)を使う」
などの方法がありますので、ご安心くださいね。
- Q11:メトトレキサートはいつまで飲んだら良いですか?
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リウマチが再発しないように、また将来手足の変形が進まないように、メトトレキサートはリウマチが落ち着いていても継続してください。
解説)
メトトレキサートの治療でリウマチが良くなって「リウマチである事を忘れてしまうほど、調子が良いです」と笑顔で仰っていただく方がたくさんいらっしゃいます。
治療をさせて頂いている僕らも、そんな患者さんが良くなられた言葉を聞くと「本当に良かったな」と大変うれしく思います。そんなリウマチである事を忘れてしまうくらいの良い状態を続けるためにも、ぜひリウマチのお薬は継続してください。
ここで皆さんにぜひ知って頂きたいのは、リウマチが治療で凄く良くなった状態である「寛解(かんかい)」と、風邪やケガなどが完全に治った時に使われる「完治(かんち)」は違うという事です。
リウマチが良くなった状態は寛解(かんかい)といって、お薬を使いながら病気の症状や進行を抑えている状態です。お薬が無くなると、体の中にいる免疫絵細胞がまた暴れだしてリウマチが再発してしまいます。
夫婦や友達同士でも仲良い状態を維持するには、毎日の会話や思いやりある行動が必要なように、リウマチも良い状態を維持するためには定期的にお薬を継続する事が大切なんですね。
ただメトトレキサートを飲むと気持ち悪くなったり、肝臓や腎臓の数値が高くなってしまうなど、メトトレキサートでトラブルが出ている場合には量を減らしたり中止する事もあるので、そんな時はリウマチ専門医にご相談くださいね。
- Q12:インフルエンザや帯状疱疹などの予防接種は受けても大丈夫ですか?
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「インフルエンザ」「新型コロナウイルス」など、大人の方が毎年行われるようなワクチンは問題ありません。「はしかワクチン」など、一部の特殊なものは生ワクチンなので接種できません。
解説)
ワクチンには大きく3種類あり、感染力のない不活化ワクチン、弱いウイルスがはいっている生ワクチン、ウイルスの作る物質だけを取り出したトキソイドワクチンがあります。
このうち、生ワクチンだけが本当のウイルスが入っているので、メトトレキサートなどリウマチの治療をしている方は接種ができません。
ただこの接種できない生ワクチンは、「BCG」「はしか」「風疹」「おたふく」など子供がやるものばかりなので、あまり困る事はないかと思います。時々、妊娠前の検査で風疹の抗体がないのでワクチンをすすめられる方や、周りではしかが流行っているので接種したいという方がいらっしゃいますが、その場合には接種はできないので気をつけてください。
そういった特殊な場合を除いて、多くの方が受ける「インフルエンザ」「新型コロナウイルス」「肺炎球菌」などは不活化ワクチンなので、メトトレキサートなどのリウマチの治療をしていても問題なく受けられるので安心してくださいね。
また最近では帯状疱疹のワクチンにも「シングリックス」という不活化ワクチンが開発されたので、帯状疱疹のワクチンも接種する事ができるようになっています。
どのワクチンも接種する事で予防ができたり、仮にかかってしまっても症状が軽く済みますので、検討してみてくださいね。