- Q:NHKの番組、きょうの健康で「関節リウマチの早期発見がカギ!」と特集されていました。リウマチの早期発見について、教えてください。 (さいたま市 40歳代女性)
(さいたま市 60歳代男性)
A:リウマチの早期発見には、今までのレントゲン検査だけでは不十分で「関節エコー検査」「MRI検査」が必要になります。
特に「関節エコー検査」は体への負担もなく、その場で診察室でも検査できるので、リウマチの早期発見に大変力を発揮してくれる検査になります。
リウマチの早期発見について、教えてください。
ワンポイント解説
〇なんでリウマチの早期診断が大切なの?
番組でもご紹介されていましたが、リウマチはウイルスや細菌から体を守る免疫システムに異常が起きる病気である「こう原病」の中の一つになります。リウマチの場合には、特に手足の関節の中で免疫が暴れて炎症をおこして、痛みや腫れ、こわばりなどの症状がでてきます。
リウマチで注意しなくてはいけないのは、もちろん手や足が腫れて痛くなる事も大変ですが、そのままにしておくとリウマチが進行して手足の骨が破壊されて曲がったり動かなくなったりと、変形を起こしてしまう事になります。
一昔前は良いお薬がなく、リウマチと分かっても病気の進行を止められずに手足が曲がって変形してしまう病気でした。実は、私の祖父もリウマチだったのですが、いまから20年も前の話しなので、良いお薬がなく段々手足が変形して、ボタンがかけづらくなったり、靴下がはけなくなってしまいました。
しかし、ここ数年でリウマチの新しいお薬が沢山登場し、リウマチの治療はとっても良くなりました。手足の痛みや腫れを良くするだけでなく、骨が変形してしまうリウマチの進行もしっかり止める事もできるようになりました。
しかし、一度起きてしまったリウマチが進行したことによる手足の変形は、いくらお薬を使っても元に戻りません。なので「リウマチをいかに早期に発見するか」「手足の変形など起きる前に、治療を開始する事」が勝負所になってきています。
〇リウマチの検査は「レントゲン→MRI→関節エコー」の時代へ
今までリウマチというと、手足をレントゲン撮影してその結果で診断をしている時代がありました。確かにレントゲンだと手足の骨がよく映るので、リウマチのせいで骨に穴があいたり、曲がってしまっているのを見る事が出来ます。しかーし、逆に言うとすでの壊れてしまった骨を見つけているのにすぎません。骨が壊れる前の早期のリウマチを、レントゲンでは見つけるのは実は至難の業なんです。ズバッといってしまうと、レントゲンだけでは早期にリウマチを見つける事ができません。
〇リウマチの検査は「レントゲン→MRI→関節エコー」の時代へ
そんなレントゲンで見つけにくい早期のリウマチの診断に使われてきたのが、MRI検査になります。あまり馴染みが無いかもしれませんが、大きな病院様などに置かれている大きな機械になります。このMRIを使うとレントゲンには映らないような、骨が壊れる前の骨の中の炎症や、関節の中の炎症などを見る事ができます。また次に紹介する関節エコーが苦手な首や背骨、股関節などの体の奥にある関節を見る事も得意です。
とても良い機械なのですが、とても高価で大きな機械なので大きな病院様にしかなく、検査が予約待ちで数週間後、また検査に時間がかかりどこか一部位しか撮影できない、妊婦さんなどは検査ができないなど弱点がありました。なので、なかなか検査の予約がとれずに、待っているうちにリウマチが進行してしまったりなんて事もありました。
そんな状況で、僕らリウマチ医も「なんとかもっと簡単に、そして患者さんの負担もなく早期にリウマチの診断ができないものかな?」と長年思っていました。そこで登場したのが「関節エコー検査」になります!
〇凄いぞ、関節エコー検査!
エコーと聞くと人間ドックや健康診断でやるお腹のエコー検査や、妊婦さんがお腹の中の赤ちゃんをみるエコー検査と全く同じです。関節エコーの場合には、お腹では無くて痛みや腫れている手足にゼリーをつけてエコー検査をします。すると、レントゲンでは写りにくい関節の中が綺麗に見えて、リウマチなどで関節の中に炎症が起きているかどうかがその場でスッキリ分かります。しかも、レントゲンのような被ばくもなく、MRIのような大掛かりな機械でなく診察室にはいりますので、その場で医師と話ながら検査ができる、そんな安全性と便利さも兼ね備えた優れものの検査になります。
リウマチかどうかを診断する時にも大活躍ですが、さらに治療を始めた後にリウマチが良くなっているのかどうかも関節エコーでチェックする事もできます。
これも、その場で気軽に検査ができる、関節エコーならではの利点だと思います。よくあるのが、「リウマチの治療をしていて手や指の関節が良くなったのに膝の痛みだけが残っていて、関節エコーをやったらそこはリウマチではなくて加齢性の痛みでした。」なんて方です。リウマチが残っている事が原因の痛みならリウマチのお薬を増やす必要がありますが、加齢性の痛みだったらリウマチのお薬を増やしても効果はありません、そのお薬を増やすかどうかの大切な判断にも、関節エコーは大活躍してくれます。
まさに現在のリウマチの検査や治療に関節エコーは欠かせない検査で、リウマチかどうかご不安の皆さまの安心をお届けできる優れものの検査だと思います。
〇リウマチが心配な時の、病院の選び方
「手足が痛くてリウマチは心配」
「リウマチの治療をしてるけど痛みや腫れが引かない」
という方は、番組でも言われていたようにリウマチ専門医に相談になります。リウマチ科、膠原病科、整形外科の先生の中にリウマチ専門医をお持ちの医師がおります。
さらに本音をいうと、リウマチ専門医なだけではなく「関節エコー検査ができるリウマチ専門のクリニックや病院」にご相談頂くのが、リウマチの早期発見や適切な治療を考えると良いと思います。
もしホームページをみても関節エコーができるのか良く分からなかったら、お電話で「関節エコーってできますか?」と聞いてみるのも良いかと思います。
私たちのクリニックでも、関節エコーを使ったリウマチ診療をしておりますので、お気軽にご相談くださいね。
参照:きょうの健康 免疫システムに異常!こう原病「関節リウマチ 早期発見がカギ!」
[NHKEテレ1・東京] 2020年12月14日 午後1:35 ~ 午後1:50 (15分)
出演者【長崎大学大学院 教授】川上純,【キャスター】岩田まこ都,永井伸一
文章 医師 佐藤理仁