冬になって新型コロナウイルスが再び勢いを増してきています。
これから、寒く空気の乾燥した時期になりますのでウイルスは元気になる可能性が高く、人間の鼻などの粘膜バリアは弱くなってしまいます。
また寒さで換気がしにくく、室内にウイルスが漂ってしまう環境がどうしてもできやすくなってしまいます。
これから冬~春にかけて、今まで以上のコロナウイルス患者さんが増え、知人や家族にも感染する方が出てくるかもしれません。
そこで、そんなコロナ第3波の前に、現段階で分かっているリウマチ患者さん向けの新型コロナ情報をまとめてお伝えさせて頂きます。

Q:リウマチがあると、コロナウイルスにかかりやすかったり、重症化しやすかったりしますか?


A:現時点でリウマチの方がコロナにかかりやすかったり、重症化しやすいとは言われていません。

リウマチお薬が、コロナ感染になりやすかったり重症化になりやすいというのは現時点ではっきり言われていません。
重症化する危険性が分かっているのが「高齢」「肺の病気」「腎臓の病気」「心臓病」「肥満」「糖尿病」などになります。血糖や減量など、メタボを改善することが重症化予防の面で、自分でできる事になるかもしれませんね。あとは、皆さんと同じように感染予防策(3密を避ける、手洗い消毒、マスク、換気、ソーセージ)が大切になります。特にこれから寒くなるので、窓を少し開けて換気をしたうえで、適度な湿度(50-60%)、温度(20-25度)を保つことが大切だと思います。


Q:リウマチのお薬はそのまま続けて大丈夫でしょうか?


A:コロナウイルス感染の疑いがなければ、リウマチの治療はしっかり続けて頂く事をお勧めします。

リウマチのお薬膠原病のお薬を減らしたり中止することで、病気の再発が起きる可能性があるので、お薬は主治医の先生と相談してしっかり継続してください。
とくにステロイド(プレドニン、プレドニゾロンなど)を使用されている方は、突然中止してしまうとリウマチが再発するだけでは無くて、リバウンド症状がでて強い怠さや熱、吐き気、頭痛などがでてしまう事がありますので注意が必要です。ステロイド以外のリウマチのお薬を含め、自己判断で減らしたり、中止しないようにしましょうね。


Q:もしコロナに感染してしまった、または感染が怪しい時はどうしたらよいでしょうか?


A:まず主治医の先生にお電話で聞く事が大切になります。可能であれば、もしコロナに感染しちゃった時にお薬をどうしたら良いかを、主治医の先生にあらかじめ確認しておくと、より安心で良いですね。

その上で参考ではありますが、リウマチ学会という僕らの様なリウマチ専門医が集まる学会から、こんな対応したらいいですよというのが出ています。
これはとても分かりやすくて、「新型コロナ感染が怪しい時は、メトトレキサートや生物学的製剤膠原病の免疫抑制剤は一時中止か減らす、一方でステロイドはそのまま同量を続ける」というものです。ざっくりいうと、「どんなに調子が悪くてもステロイドはそのまま続けてくださいね、その他のリウマチのお薬は調子悪ければいったんお休みを考えてくださいね。」そんなイメージになります。参考になれば幸いです。
さらにアメリカの学会からは、コロナに感染して治った後のリウマチの治療についてこんな対応はどうですか?というのが発表されているのでご紹介させて頂きますね。

<無症状のコロナ感染の方> コロナ診断(PCR陽性の日)から10-17日後に治療再開可能
<軽い症状のコロナ感染の方> コロナの症状が無くなってから、7-14日後に治療を再開
<重症のコロナ感染者の方> 治療再開はお1人お1人の状況で考えてください

となっております。コロナに感染しちゃった後のリウマチ治療はどうなるんだろう?と心配されている皆さまに、コロナが治った後はこんな感じだよというイメージになれば幸いです。ただ、これはあくまでイメージで、お1人お1人で治療の状況も違いますので、主治医の先生と必ずご相談してお薬をどうするかなど決めてくださいね。


Q:リウマチのお薬がコロナウイルスの治療になるんですか?


A:サイトカインストームという状態になっている重症コロナ感染患者さんに、デキサメタゾンというステロイドの治療が行われています。その他のリウマチのお薬に関しては、まだ研究中になります。

アクテムラやオルミエントなどのリウマチのお薬が、新型コロナの治療になるかも?という新聞の見出しをみて驚かれた方も多いと思われます。
まだ研究中の話しにはなりますが、どうも新型コロナウイルス感染を起こして重症化してしまった方の体の中では、リウマチ膠原病と同じく免疫細胞が暴走して悪さをしている可能性が高いことが分かってきました。ここで登場するのが、サイトカインというリウマチ膠原病でもおなじみの物質になります。人間の体には沢山の細胞がありますが、このサイトカインという物質をつかって細胞同時が情報をやり取りしています。ざっくりいうと、Twitterのような感じでしょうか。体の中で、細胞同士がTwitterでサイトカインというツイートをしてコミュニケーションをしているのをイメージしてみてください。
本物のTwitterでも変なツイートをすると炎上してしまうように、炎上してしまうような内容のサイトカイン(=本当に炎症性サイトカインと呼ばれます)を発信すると、沢山の免疫細胞達が興奮してリツイートしまくって大炎上を起こします。このサイトカインTwitterの大炎上をサイトカインストームと呼びます。
リウマチでは主に関節の中でサイトカインが炎上し、免疫細胞が興奮して暴れて痛みを起こします。他の膠原病でも、腎臓や皮膚など色々な場所でサイトカインが炎上し免疫細胞が暴れて悪さをします。コロナの重症肺炎の場合には、肺の中でサイトカインがリツイートしまくり大炎上、そして免疫細胞が暴れて肺を壊して呼吸ができなくなってしまいます。ここで期待されるのが、リウマチで使われるようなサイトカインや免疫細胞を抑えるお薬になるんですね。
ただこれらのお薬には、ウイルス自体をやっつける効果は無いのでレムデシベルのような抗ウイルス薬とは別物です。また、コロナウイルスにかかりにくくなるといった事も考えにくいので、リウマチのお薬をつかっているから、逆にコロナにかかりにくいなどと誤解しない様にしてくださいね。

文章 医師 佐藤理仁
参考 日本リウマチ学会