Q:半年前に手や指が痛くてリウマチかもと言われました。その後、太ももや肩の筋肉痛も痛くなって、最近では足腰が弱ってきてしまいました。体がだるくて、階段を上ったり、ベッドから起き上がるのも力が入らず大変です。やっぱりリウマチなんでしょうか?


A:関節エコー検査でみると、今は関節の中にリウマチのような炎症は起きていなくて、ご持参頂いた血液検査でもリウマチの数値や炎症の数値は出ていません。目の周りや、手の甲、肘に湿疹もみられ、おそらく皮膚筋炎(ひふきんえん)という膠原病が考えられます。最初にあった手や指の痛みですが、皮膚筋炎でも最初にリウマチのような手指の痛みがみられることがあるので、おそらくそれだったのかと思います。膠原病科のある大きな病院様での検査治療が必要ですので、すぐに紹介状をお書きしますね。


ワンポイント解説

皮膚筋炎(ひふきんえん)は名前の通り、皮膚と筋肉で免疫の細胞が暴れてしまう膠原病の一つになります。似た病気に、多発性筋炎(たはつせい きんえん)というものがありますが、これは皮膚には症状がなくて筋肉を中心に免疫細胞が暴れてしまう膠原病になります。また、免疫細胞が体の中で暴れて炎症が起きる事で、全身の倦怠感や、微熱、体重減少も引き起こします。この皮膚筋炎/多発性筋炎は、100人に1人のリウマチに比べて稀な病気で1万人に1人のイメージになります。子供時代と50-60歳の大人になってからなりやすい病気になります。


①筋肉痛・筋力低下
首や背中、二の腕、腰、太ももなどの、体の中心に近い大きな筋肉に、筋肉痛や筋力低下が出てきて、ゆっくり徐々に悪くなるのが特徴です。 そのため、「階段を上り下りするのが大変」「ベッドから起き上がるのが大変」「椅子から立ち上がるのが大変」「髪の毛をとかすのが大変」など、今まで出来ていた日常動作が徐々にできなくなってきます。

②皮膚の湿疹
手の甲側の指、伸びる側の肘や膝に、ピンク~紫の湿疹がみられるのと、両眼の上瞼にも紫色の湿疹ができるのが特徴です。(それぞれゴットロン徴候、ヘリオトロープ疹と呼ばれます)
また、首にVネックシャツのようなV字型の赤い湿疹、首の後ろから両肩に欠けての赤い湿疹、指先の皮膚がガサガサしたり、爪の周りが赤くなったりといった、色々な皮膚の湿疹が出てきます。

③肺、心臓、腸
一番問題なのは、皮膚や筋肉だけでなくて、肺・心臓・腸といった内臓にも免疫の細胞が暴れて悪さをしてしまう事です。間質性肺炎という免疫の肺炎を起こして息が苦しくなったり、不整脈や心筋炎といった心臓の働きを悪くしたり、腸の働きが悪くなったりします。
症状が内臓にまで及ぶ可能性がある事、検査には筋肉のMRIや筋肉の一部を顕微鏡で見る検査が必要であったり、治療も入院してのステロイドや免疫抑制剤治療などになるので、膠原病科のある大きな病院での検査と治療が必要な病気になります。

文章 医師 佐藤理仁